かんぽ不正販売/企業体質の根本改善を

 日本郵政傘下のかんぽ生命保険で9万件を超える不正販売が行われていたことが分かり、かんぽ生命と、保険を委託販売している日本郵便の両社長が謝罪した。不正の内容は極めて悪質であり、徹底した原因究明をした上で再発防止策を講じるのはもちろん、両社の企業体質の根本的な改善が必要だ。

 かんぽ生命によると、保険を乗り換えた顧客に新旧契約の保険料を二重払いさせていた事例が約2万2千件、一時的に無保険になった事例が約4万7千件、ほかに顧客が不利益を被ったケースが約2万4千件あった。不正販売が長期間、常態化していたとみられ、2007年の郵政民営化以降、最大の不祥事である。

 かんぽ生命は対策本部を設置し、無保険になった顧客の契約復元や保険料の二重払い分の返還など顧客救済に取り組むとともに社外の有識者による第三者委員会を設け、一連の問題を調査する方針だ。

 不正の実態は消費者の信頼を大きく裏切るものだ。二重契約の場合、新契約の締結から旧契約の解約まで6カ月以上あると、乗り換えではなく新規扱いされて営業成績が上がるため、解約を先延ばしさせた疑いが強い。

 逆に先に旧保険を解約した場合、3カ月以内に新しい保険を契約すると、乗り換えとして営業成績算入額が減るため契約を遅らせ、無保険状態になる例があった。

 こうした不正行為を招いたのは、行き過ぎた成果主義とみられる。保険の大半は、日本郵便が郵便局などで委託販売しており、横山邦男社長は過剰なノルマが背景にあることを認めた。

 両社は郵便局の信用力を利用して成果最優先、顧客軽視の営業を続けていたわけで、従来の営業方針を全面的に見直し、顧客本位の意識を確立することが急務である。

 かんぽ生命は当初、顧客が同意しているとの理由で「不適切な販売ではない」と主張していたが、危機感が薄すぎると言わざるを得ない。後手後手の対応では信頼回復はできない。両社は過去の契約を洗い直し、不正販売の全容と原因を解明するとともに、万全の再発防止策の策定に努めなければならない。

 金融庁は、顧客に対する虚偽の説明などがあれば保険業法に抵触する恐れがあるとして、かんぽ生命に報告を命じるとともに、業務改善命令など行政処分の検討に入った。徹底した調査と厳正な対応を望みたい。

 郵政民営化により07年10月に発足したかんぽ生命は、09年に郵便局職員らによる横領事件で金融庁から業務改善命令を受けた。これを踏まえて経営管理体制の改善に取り組んだはずだったが、日本郵便とともに、顧客に不利益が生じても目標達成を優先する現場の暴走を許した。

 日本郵政グループは利益の大半を金融事業で稼いでおり、低金利で経営環境が厳しさを増す中、営業偏重に走ったとみられるが、同じ誤りを繰り返すことは許されない。

 政府は保有する日本郵政株の一部を今秋にも売却し、将来は保有比率を3分の1近くに下げる計画だ。かんぽ生命とゆうちょ銀行の株は全て売却する予定だが、今回の不正の影響で計画通りに進まなくなる恐れもある。信頼回復のために企業統治の根本からの立て直しが求められる。

2019年7月13日 無断転載禁止