参院選・年金/財源含め冷静な議論を

 金融庁金融審議会の「老後資金2千万円」報告書が明らかになって以降、国民に不安が広がり、年金問題が参院選の争点として急浮上した。

 ただ主要政党のうち、公約に年金制度の抜本的な改革を打ち出しているのは日本維新の会だけだ。2009年の政権交代で、政権の座に就いた旧民主党が最低保障年金の導入を唱えながら、その後頓挫した経緯は、抜本改革の難しさを物語っていると言える。

 維新の会は現行の賦課方式から、自分が積み立てた保険料を老後に受け取る「積み立て方式」へ長期的に移行するとしている。その場合、保険料が年金の原資にまで積み上がるまでの間は、現行の賦課方式を維持するための保険料も必要で、二重の負担の扱いを検討しなければならない。

 ほかの党の公約は、年金制度の骨格に踏み込むというよりは、金融審議会のワーキング・グループ報告書があぶり出した「老後の不安」に対応しようとしている。

 問題となった報告書は高齢無職世帯の場合、公的年金を中心とする収入が毎月の支出に5万円不足するとの試算を示した上で、95歳まで生きるとして夫婦で約2千万円が必要となると指摘した。

 19年度の年金額をみると国民年金は、保険料を40年間納めた満額で月6万5008円(夫婦2人で単純計算すれば計13万16円)。厚生年金は平均的な給与で40年働いた夫と専業主婦のモデル世帯で月22万1504円だ。この額を下回るケースも多数あり、多くの高齢者は支出の切り詰め、預金の取り崩しなどで対応している。

 4月の生活保護受給世帯(支給停止中は含まず)は約162万で、うち55%に上る89万は高齢者世帯。無年金あるいは低年金であれば、ただちに生活の困窮に陥ることを示している。

 安倍晋三首相は国会閉幕時の記者会見で、秋の消費税増税を原資に、年金額の少ない人に年最大6万円の給付を行うと表明。公明党も、低年金者への給付金の拡充を訴えている。

 立憲民主党は、年金の「最低保障機能を強化する」とするが、具体案を示していない。国民民主党は、低年金者に対し最低でも月5千円を上乗せするとした。共産党と社民党は、物価や賃金の伸びより年金の給付を低く抑える「マクロ経済スライド」をやめ年金の目減りを防止すると訴える。

 上乗せ給付や最低保障機能の強化には財源が必要になるだけに丁寧な説明が必要だ。年金制度や老後の不安を政争の具とすることなく、分かりやすい言葉で冷静な議論を交わすことが与野党ともに求められている。

 今年は年金財政の健全性をチェックする5年に1度の「財政検証」の年。前回は6月前半に検証結果が公表されたが、今回は先送りしており、年金を巡る議論が本格化するのはむしろ参院選後になる。検証結果次第では、保険料の引き上げや支給開始年齢の引き上げも議論の対象となる重要なデータだ。

 野党は、検証結果の未公表も、麻生太郎金融担当相が金融審議会の報告書を受け取らなかったのと同様、政権にとって不都合を覆い隠そうとしていると批判を強めている。有権者にとっての一つの判断材料になるかもしれない。

2019年7月14日 無断転載禁止