「海なし県」の海の日

 今年の上半期にヒットした映画の一つが「翔(と)んで埼玉」。「パタリロ!」で知られる漫画家魔夜(まや)峰央(みねお)さんが40年近く前に書いた同名漫画を実写化した。埼玉県をディスる(さげすむ)内容が話題を集め、興行収入は37億円を超えたという▼とにかく「埼玉ディスり」が強烈だ。埼玉県民は通行手形がないと東京に入れない設定。都民に迫害され、手形を持っていないと強制送還されてしまう▼見た県民が怒りそうだが、苦情はなく、それどころか埼玉での集客が全国トップらしい。たとえ差別的な扱いでも、埼玉が全国的に話題になり、注目されること自体が誇らしいのだろう。そう言えば島根、鳥取両県も知名度の低さを強調した自虐ネタで存在感を全国にアピールし、多くの県民が笑って容認した。心の根底に郷土愛があるからだろう▼映画では埼玉県民の海への強い憧れも描かれている。内陸部に位置し海に面していないためで、同様な「海なし県」は全国に8県ある。そこで疑問を抱いた。きょう15日は「海の日」。海なし県は海の日に特別な対応を取っているのか▼調べると、奈良県が11年前、海の日の7月第3月曜日を「奈良県山の日・川の日」とすることを条例で定めていた。県民が誇りと愛着を持てる奈良の美しい山と川を育み、次世代へ引き継ぐのが目的という。海の有無にかかわらず、誇りを持てる郷土の自然を見つめ直す日にしたい。(健)

2019年7月16日 無断転載禁止