参院選・人口減少問題/危機感を持って論議を

 3年前の参院選、安倍政権は「1億総活躍社会」の目標として「希望出生率1.8」を2025年度までに実現することを掲げた。自民党の選挙公約にも「育児・介護休業を取得しやすく、仕事と子育て・介護を両立できる制度の導入」によって目指すと明記した。

 ところが今回の自民党公約には、出生率の文字さえ見つからない。厚生労働省が6月に発表した18年の合計特殊出生率、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数は1.42となり、3年連続で低下しているからだ。生まれた赤ちゃんの数は統計開始以来最少となり、死亡者が増えて自然減は過去最多となっている。

 出生率を見る限りは、少子化対策の効果は全く上がっていない。団塊の世代が70代に入り、生まれる子どもの数は今後さらに減る見通しだ。安倍晋三首相が「国難」と呼ぶ人口減少のペースが、加速することは明らかだ。

 今回の自民党公約には、子育て支援などの対策はあるが、少子化対策について具体的な目標はない。選挙のキャッチフレーズにはならないと判断したのだろう。そのことが、減少がもたらす事態の深刻さが分かっていない証拠とも言える。

 確かに生産性の向上によって経済成長をある程度は維持できるだろう。だが国内総生産(GDP)の6割は個人消費が占める。人口減少はGDPだけでなく年金制度や地域社会に大きな影響を及ぼす。少しでも減少を緩やかにするためにも、与野党が協力して中長期的な課題として少子化対策を真剣に論じるべきだ。

 まず若者の高い未婚率をどうするかだ。経済的な理由で結婚や子どもを諦めている状況は改善しなければならない。将来の見通しを立てやすくするためにも正社員として働く若者を増やすことが有効だ。

 さらに出産や育児のため取得する長期休暇が、キャリアに影響しないような人事システムにする企業側の努力も求めたい。子どもの数を増やした欧州の国に倣い、結婚、未婚を問わず子育てや子どもの教育について親の経済的な負担をできるだけ軽減することも同時に進める必要がある。

 社会の備えとしては、生活を維持する仕組みづくりを急がねばならない。一つの地方自治体が全ての行政サービスを実施することはより難しくなる。政府の地方制度調査会が打ち出しているように、医療や福祉、防災などの幅広い分野で自治体が連携することが不可欠となる。

 高齢化も著しい農山漁村では、生活を守るために住民が主体となった多くの組織が生まれている。市町村よりも小さな圏域を対象に、住民らが自ら会社をつくってガソリンスタンドや商店を経営したり、行政の委託を受けて高齢者の見守りをしたりとさまざまな活動が始まっている。これらを後押ししたい。

 まちづくりの長期的な視点としては、行政が主導して、住民が同じ地域に集まって住むコンパクトな社会に転換すべきだ。家の建て替えなどに合わせ、土砂災害や水害の被害を受けやすい場所を避け、安全な所に集まる誘導策づくりを国や自治体に望みたい。

 急速な人口減少が避けられないだけに危機感を持って今から準備しなければならない。

2019年7月17日 無断転載禁止