参院選・エネルギー政策/将来像の議論が足りない

 世界各国にとってエネルギー政策は今、重要度を増している。2015年に採択された地球温暖化防止のためのパリ協定が来年、本格的に動きだす一方、温暖化に起因するとみられる気象災害が多発し、協定の目標実現のために温室効果ガス削減目標の上積みが求められているからだ。

 石炭や天然ガスなどの化石燃料依存から一刻も早く脱却し、安定かつ持続可能なエネルギー需給を実現することは、国の経済や社会の将来を左右する重いテーマだ。東京電力福島第1原発事故を経験した日本では、原子力発電の扱いも大きな政策課題だ。

 原発を含めたエネルギー政策に関する与野党の公約には大きな違いがある。各党には、国の将来像を描く上での重要な問題として活発な政策論議を行い、有権者の判断を仰ぐ姿勢が求められる。

 安倍政権下でまとめられた電源構成は、30年度に原発の電力は20~22%、再生可能エネルギーは22~24%にするとしている。「再生可能エネルギーの主流電源化を目指す」とする割に、この数値は他国に比べて大きく見劣りする。

 一方で、原発の再稼働は進んでいない。高コスト化が目立つ中で廃炉となる原発も増え、テロ対策の不備を理由に運転停止を余儀なくされる炉があるなど、この比率の実現は極めて困難な状況になっている。

 先にまとめた温暖化対策の長期戦略では、今世紀後半のできるだけ早期に温室効果ガスの排出のない「脱炭素社会」を実現すると掲げながらも、温室効果ガスの排出量が大量で、多くの先進国が廃絶を打ち出している石炭火力は温存する姿勢だ。国内では新規の発電所の建設が進み、30年度の温室効果ガスの排出削減目標は、上積みどころか、その達成すら危ぶまれる状況に陥っている。

 原発などの大型発電設備を所有する大電力会社が送電網も所有していることが、再生可能エネルギー拡大の足かせになっている状況が続き、固定価格買い取り制度の負担が大きすぎるとの産業界の声に応える形で、制度の廃止まで議論されるようになった。

 現政権のエネルギー政策は明らかにちぐはぐなのだが、与党の政権公約は現状を継続する内容になっている。

 安倍首相は「原発ゼロは責任あるエネルギー政策とは言えない」と明言。自民党は、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けている。与党として選挙戦の中で、現在の政策を維持しながら30年度の電源構成比率や温室効果ガスの排出目標の達成、脱炭素社会の実現をどう可能にするのかを具体的に示し、原発や石炭火力発電の将来像を明確にする責任がある。

 これに対し、野党のほとんどが脱原発を打ち出し、再生可能エネルギー導入目標の拡大などを公約に掲げている。立憲民主党は30年までに石炭火力発電全廃を目指すことを打ち出した。ならば、この問題で積極的な政策論争を挑むべきだ。

 選挙戦の中で、エネルギーや原発政策の議論が極めて少ないが、これではいけない。世界では今、再生可能エネルギーの拡大を中心にしたエネルギー政策の大転換が進んでいる。それが各国の産業の国際競争力や安全保障をも左右する重要な政策課題であることを忘れてはならない。

2019年7月18日 無断転載禁止