参院選でかすんだ地方創生/実効性ある具体的施策を

 令和最初の国政選挙となった参院選が終わった。選挙期間中の各党の論戦は、老後資金2千万円問題を踏まえた年金制度や、10月に予定される消費税増税に集中した。確かにタイムリーで重要な争点ではあるが、それらが注目を集めるあまり、山陰両県をはじめ人口減少に苦しむ地方にとって喫緊の課題である地方創生がかすんだ感が否めない。

 3年前の前回選に続き、合区制度が適用された鳥取・島根合区選挙区(改選数1)の投票率は低調だった。再選を目指す自民党現職と、元共産党衆院議員の野党統一候補による事実上の一騎打ちという構図は、有権者には対比しやすかったはずだ。だが、東西300キロ以上にわたり離島も抱える広大な選挙区では、候補の声が伝わりにくかった。

 加えて有権者を混乱させたのが、今回から比例代表に新設された「特定枠」。自民党が選挙区で候補者を出せなかった県の救済策として、候補が比例で優先的に当選できるようにしたが、当の候補はポスターの掲示や個人演説会の開催ができないなど選挙活動が制限された。こうした分かりにくさが低調な投票率の一因になったのではないか。

 そもそも合区制度が導入された背景には東京一極集中に伴う地方の人口減少がある。その一極集中を是正して地方に活力をもたらそうと、安倍政権が2014年に打ち出したのが地方創生だ。

 政府は、本年度までの5カ年計画で、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)の転出と転入の人数を20年に均衡させる目標を設定。省庁の移転や地方大学の活性化を掲げた。ところが、20年東京五輪・パラリンピックや好景気に伴う企業の業績アップもあり、一極集中はむしろ加速。18年の東京圏への転入者は転出者を約14万人も上回った。

 選挙期間中の10日に総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、今年1月1日時点の国内の日本人は1億2477万6364人で、前年から過去最大の43万3239人減少した。昨年1年間の出生数が最少だったのが大きく影響。都道府県別で伸びたのは東京圏と沖縄のみだった。

 山陰両県を見ると、島根は67万7251人で6285人減、鳥取は56万1445人で5050人減った。減少率は島根が0.92%、鳥取は0.89%で、全国平均の0.35%を大きく上回っている。

 一方、今回の調査では光明も見えた。隠岐諸島・知夫村の人口は16年からの3年で45人増の635人に。18年からの増加率は町村部で全国トップの3.93%になった。18歳まで医療費無料、15歳まで月5千円、16~18歳は月1万円の子育て支援奨励金を支給するなど積極的な施策が実を結び、移住者を増やしている。

 女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率も、18年の島根は1.74で前年比0.02ポイント増えた。ただ、全国平均は1.42で同0.01ポイント減。安倍政権が掲げる「25年度末までに1.8」の目標達成は厳しさを増す。

 手詰まり感が漂う中、政府は第2期となる20~24年度の地方創生の方向性を示す「まち・ひと・しごと創生基本方針」を6月に決定。具体的な施策は来年度予算編成に合わせて決める。選挙目当ての総花的なお題目ではなく、実効性のある施策が求められる。

2019年7月22日 無断転載禁止