東京五輪まで1年/柔軟で緻密な準備を

 東京五輪の開幕まであと1年となった。序盤に二つの手痛いつまずきがあったが、国と東京都、大会組織委員会による開催の準備はほぼ順調に進んでいる。

 五輪史上、現在の東京首都圏ほど多くの市民が暮らし、活発な経済活動が営まれている地域の中心で大会が開催されたことはない。必然的に交通・輸送の対策は今回、広範囲で複雑なものとなる。過去の事例が参考にならないケースもあるだろう。柔軟さを備えながら、緻密で精巧な計画を磨き上げてほしい。

 大会への市民の関心は高い。それはチケット1次販売での購入申込者の多さに表れている。

 前回リオデジャネイロ五輪で日本は金、銀、銅合わせて史上最多の41個のメダルを獲得した。選手の活躍はその後も幅広く続き、五輪競技の選手と市民との距離はかつてなく近いものになった。

 新国立競技場は11月に完成する。当初の設計案では経費が3千億円に膨らむ恐れがあるとされながら、建設の責任を担う日本スポーツ振興センターは耳を傾けず、結局、安倍晋三首相が白紙撤回を決断した。4年前のことだ。

 続いて大会エンブレムが発表後に盗作疑惑が持ち上がり、これまた白紙撤回に追い込まれた。組織委はこれを教訓に、専門性を重視するあまり閉鎖的になっていた大会のさまざまなシンボルについて選考方法を見直した。

 一般公募を原則とし、エンブレムばかりか、マスコット、大会ボランティア名の選考でも市民の声に耳を傾けた。マスコットは最終的には全国の小学生が投票で決定した。公募制によって、市民の大会に対する期待が広がったのはけがの功名だった。

 気になるのは、施設の大会後の利用計画が明確に定まっていないもの、実現は難しいと思われるものがある点だ。

 臨海部に新設される体操会場はスポーツ以上に商業的な利用の需要が高いとの判断から大会後、観客席を撤去し展示場に模様替えする計画だ。しかし展示場は恒久的なものでなく、10年ほど利用した後の構想はまだ白紙だという。

 今後数十年間は利用できそうな立派な施設だ。最新の技術を利用して、室内アリーナと商業的な展示場とを適宜切り替え、効率よく活用することはできないものか。

 ボートとカヌーの会場は最寄りの駅から約6キロ離れ、バス路線すら整備されていない。競技だけでなく市民が水上スポーツを楽しむために利用、コンサートも開く構想だが、マイカーでしか行けない不便さが解消されなければ絵に描いた餅になってしまう。

 競泳会場も臨海部での新設だ。五輪後は年間100の大会の開催と、100万人の来場を目指すとしているが、いくら何でも目標が高すぎる。

 臨海部は住宅地区から離れている。新設施設の周辺に街のにぎわいがあるわけではない。だからこそ施設を五輪後に有効に利用するためには、交通・輸送と連携した一体的な計画が必要だ。

 人口減少が進む全国の各都市も、商業施設と一体化したスポーツ施設を整えることが地域の活性化に役立つようだと気付き始めた。東京都による臨海部施設の五輪後の活用は、その意味でも注目され、一つの指標となることが期待されている。

2019年7月24日 無断転載禁止