日韓関係/外交に立ち返る時だ

 日韓関係が出口の見えない厳しい局面を迎えている。元徴用工訴訟を巡る対応が擦れ違ったまま、日本は一部の対韓輸出品目で管理強化を理由に手続きを厳格化、これに反発する韓国との間で、ののしり合いに近い応酬が展開されている。

 ジュネーブで行われた世界貿易機関(WTO)の一般理事会では、韓国は元徴用工訴訟に関連した「報復だ」と主張、日本は「いかなる歴史問題とも関係がない」と反論し、議論はかみ合わないまま終わった。

 日韓双方とも担当幹部を派遣し、WTOという舞台で国際世論の理解や支持を得ようと各国への説得も行った。双方とも今後、欧米など有力国へのロビー活動も本格化させる構えだ。

 参院選前には、河野太郎外相が韓国の南官杓(ナムグァンピョ)駐日大使を外務省に呼び、韓国の対応は「極めて無礼だ」と声を荒らげ抗議、直後に韓国外務省幹部は河野外相の態度こそ「無礼」と表明した。日韓の実務者間でも「韓国は信用できない」「日本の圧力こそ不当」と相互非難が続いている。

 これが果たして正常な国家関係なのだろうか。とても外交交渉とは言えない不毛な消耗戦を続けても互いに疲弊するだけだ。WTOの一般理事会では、日韓の対立を積極的に仲裁しようという第三国からの議論は聞かれなかった。

 各国とも複雑な背景がある日韓の対立に巻き込まれたくないというのが本音だろう。日韓の指導者が着地点を見いだすほかないのだ。安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、外交に立ち返る決断をすべきだ。

 まずは、韓国が発端となった元徴用工訴訟で日本に丁寧な説明をする必要がある。1965年の国交正常化に際し締結された日韓請求権協定を否定するような韓国最高裁の確定判決と請求権協定の関係を明確にするべきだ。

 この点を曖昧にしたままでは、「協定を守らない国際法違反の状態を放置している」とする日本の根深い不信感を解消することはできない。

 文大統領は来年4月の総選挙もにらみ「日本カード」を政治的に活用しようとしているのかもしれない。安倍政権も憲法改正論議を支える世論づくりに「韓国カード」を位置付けている可能性がある。

 だが、自治体交流事業の中断、韓国での日本製品排除運動の拡大や日本への旅行自粛など、本来は政治が左右してはならない分野にも影響が出始めている。負のスパイラルを断ち切る責任が両首脳にはある。

 日韓対立を横目に、北朝鮮は新型とみられる短距離弾道ミサイル2発を日本海に向け発射した。これに先立ち、中国とロシアの戦闘機が「初の合同パトロール」として日本海を飛行、韓国は領有権を主張する島根県・竹島(韓国名・独島(トクト))周辺でロシア軍機が領空侵犯したとして計約360発の警告射撃を行った。領空侵犯に対する韓国軍の対応規則では、撃墜一歩直前の非常に緊迫した場面だった。

 日韓が出口の見えない対立を続ければ、朝鮮半島を中心とする北東アジアの安全保障環境が不安定化、一触即発の事態が起きることがあり得ることも念頭に置かなければならない。このような危機管理の責任が日韓両首脳にあることも認識すべきだ。

2019年7月26日 無断転載禁止