児相の体制強化/対策の幅さらに広げよ

 親権者が監護や教育に必要な範囲で子を戒めることを認める民法の「懲戒権」を巡り、法相の諮問機関・法制審議会は29日から見直しの議論に入る。千葉県野田市で今年1月、小4女児が父親から暴行を受け衰弱死するなど児童虐待事件が相次ぎ、懲戒権が「しつけ」に名を借りた虐待の言い訳にされているという批判が絶えなかった。

 規定の削除や文言の修正などが検討されるとみられる。また子どもに対する親の体罰を禁じ、児童相談所の体制強化を目指す改正児童虐待防止法などが先に成立、来年4月から施行される。しかし、なお課題は尽きない。

 児相の人員・人材不足は深刻さが増している。政府は昨年、子どもや家族からの相談に乗ったり、指導や支援をしたりする児童福祉司を2022年度までに2千人余り増員することを決めた。うち千人程度は19年度中に増やすとしている。だが現場からは「児相だけで虐待通告に対応するのは限界」との声も聞こえてくる。

 全国の児相が17年度に対応した虐待の相談件数は13万件を超え、過去最多。10年間で3倍以上に増えた。政府は現場の声に耳を傾けながら、児相と市町村との役割分担や連携を見直すなど、対策の幅をさらに広げていくことが求められよう。

 政府は緊急対策として昨年7月、虐待通告から48時間以内に子どもに直接会って安全を確認できない場合には児相が立ち入り調査に乗り出す「48時間ルール」の徹底を求めた。東京都目黒区で昨年3月、5歳女児が両親から虐待を受け亡くなった事件で、児相が緊急性を見誤るなどして安全確認をしないまま最悪の結末になったためだ。

 しかし、今年7月上旬に共同通信がまとめた調査結果では、昨年7月以降、児相を設置する69自治体のうち少なくとも8割の59自治体で安全確認が48時間を超えたケースがあった。23自治体は通告の激増や立ち入り調査による保護者の負担増などを理由に挙げて、徹底は難しいとした。

 背景には現場の疲弊がある。調査には「疲れ果て、体や心を病む者も少なくない」「人員の制約から宿直態勢が確保できない」「勤務時間外でも、いつ呼び出されるか分からない」などの声が寄せられた。他の部署への異動希望も少なくないという。こうした状況を踏まえ、緊急性の低い虐待通告は児相ではなく市町村などで対応してほしいとの意見が多かった。

 来年施行される改正法は、児相内で子どもの一時保護など介入を担当する職員と、その後の親への支援を行う職員を分けて介入機能の強化を図る。これにより一時保護が増えれば、児相の負担は増すことになる。虐待通告のうち、リスクの低いケースについて対応を市町村など他の機関に振り分けることを検討してみる価値はあるだろう。

 児相は虐待対応に特化して、親の支援は市町村が受け持つという案もあり、虐待通告を児相が一手に引き受けるという現在の仕組みを抜本的に見直すことを考えたい。

 併せて人材の確保と育成に力を入れる必要がある。児童福祉司が一人前になるまでに5年以上かかるといわれる。ベテランと新人をどのように配置するかや処遇改善なども大きな課題となろう。

2019年7月29日 無断転載禁止