中国の国防白書/強軍路線を見直せ

 中国が4年ぶりに国防白書を発表し、米国に比肩する新興大国の地位を固めるために「世界一流の軍隊づくり」を進める強軍路線を明確にした。

 「新時代の中国国防」と題された白書は、習近平国家主席が2017年10月の共産党大会で打ち出した習思想に基づき、今世紀半ばの「近代化強国」実現に向けた軍の役割を詳述した。

 各国民の共生のために「人類運命共同体」の構築を目指す姿勢を強調、国防費は他国に比べ多くないと訴え、中国脅威論の払拭(ふっしょく)にも努めた。

 しかし中国が「平和的な台頭」として国際社会の信任を得たいなら、武力に依拠して勢力拡大を図る強軍路線を抜本的に見直すべきだ。

 白書は米国について「一国主義を奉じて大国間の競争を激化させた。軍事費を大幅に増やして核、宇宙、サイバー、ミサイル防衛などの能力を向上させ、世界の安定を損なった」と強く批判。

 南シナ海の島々、釣魚島(沖縄県・尖閣諸島の中国名)は「中国の固有の領土」であり、「国家主権と領土の保全を断固守る」として、南シナ海での軍事拠点づくりや尖閣領海侵犯を正当化した。

 米国はアジア太平洋で「軍事同盟を強化した」として米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備を批判。日本も「戦後体制の打破を図り、軍事の外向性を強めている」と警戒を示した。

 12~17年の国防費の国内総生産(GDP)に占める割合は「1.3%」として、米国やロシア、インド、英国、フランスなどより少ないと強調した。しかし中国の国防費には、研究開発費や装備の輸入費用、武器輸出の収益などが計上されず、実際は公表値の2~3倍との見方もあり、説得力を欠く。国防費の透明度をさらに高める必要がある。

 人類運命共同体は「平和と発展の時代の潮流に沿い、各国民の期待を反映する」とし、大国の軍隊として、国連平和維持や反テロ活動、海賊取り締まりなどに積極的に協力し、国際貢献を果たす方針を強調した。

 また、中台統一は「中華民族の根本利益」として、台湾独立派には「武力使用の放棄を約束しない」と威嚇。加えてチベット族やウイグル族の独立運動の取り締まりなど国内の治安維持も軍の重要な任務と位置付けた。

 習思想を基にした国防白書は、習思想と同様に覇権主義(強軍路線)と平和主義(人類運命共同体)という二つの異なるシグナルを発信する。白書の結語は「覇権は追わず、平和と発展の道を行く」としながら「中華民族の偉大な復興という『中国の夢』を実現するため習思想の下で強軍路線を歩む」と併記した。

 矛盾した論法で国際社会を納得させることはできない。白書を精読すれば、中国の覇権主義への疑念が強まる。中国の意図とは正反対であり、中国の不利益を招いている。

 習思想の公表を受け、トランプ米大統領は中国を「戦略的競争相手」と位置付け、対決姿勢を強めた。昨年来の米中貿易摩擦はなお解決のめどが立っていない。

 国際社会に歓迎される新興大国になりたいのなら、「近代化強国」「世界一流の軍隊づくり」を目標に掲げた習思想自体を改める必要がある。

2019年7月30日 無断転載禁止