吉本興業「闇営業」問題/反省踏まえ意識改革を

 写真週刊誌の告発から始まった吉本興業のお笑い芸人による「闇営業」問題は、2カ月近くが経過しても収束する気配がない。同社はパワハラなどの批判を招いた古い体質から脱し、コンプライアンス(法令順守)を強く意識した企業として再出発する必要がある。

 発端は6月上旬。振り込め詐欺グループの2014年のパーティーに人気お笑い芸人の宮迫博之さん、田村亮さんらが会社を通さずに出席する闇営業でギャラを受け取っていた、と写真週刊誌が報じたことだった。

 宮迫さんらは当初、報酬を否定したが、その後に受領が判明。写真誌は、暴力団関係者同席の会合に出たお笑いコンビの闇営業も報じ問題の深刻さが浮き彫りになった。

 「反社会的勢力と知らなかった」との宮迫さんらの釈明は、実態を隠しての活動が彼らのやり口と考えれば、そうかもしれない。しかし、たとえそうでも、宮迫さんは100万円という大金を受け取っている。警戒心を持ってしかるべきであり、認識の甘さと軽率のそしりは免れない。

 かつて芸能界と反社会的勢力の関係は深かった。それは吉本興業も例外ではない。各地での興行に当たり「顔役」が不可欠だった時代もあった。ただ1990年代に施行された暴力団対策法で排除の流れが社会的に強まり、各自治体による暴力団排除条例も制定され、芸能界も厳しく対応する時代へとシフトした。

 そんな中で衝撃だったのが、2011年に発覚した暴力団関係者と吉本興業所属だった島田紳助さんの交際だ。テレビの売れっ子にもかかわらず島田さんは芸能界引退に追い込まれた。同社は反社会的勢力との関係を断ち切る努力を続けてきたが、完全な遮断はまだできていなかった。

 吉本興業には所属タレントが6千人いるという。芸人は近年、富と名声をつかめる仕事として人気があるが、実際は非凡な才能と並々ならぬ努力が必要で、芸人だけで暮らしていけるのはほんの一握りと言っていい。

 口頭契約が原則だった同社は今回、批判を受けて契約書を交わす方針を決めた。不安定で「食えない」立場の芸人が危うい仕事に手を出す事態を招かないためにもコンプライアンスの強化と、彼らの待遇を向上させる必要がある。

 副業・兼業が社会に広がる中、不透明化・巧妙化する反社会的勢力と知らないうちに関わりを持つ可能性が私たちにもある。会員制交流サイト(SNS)で誰もが知り合う時代、社会全体で対策に取り組むべきだろう。

 宮迫さん、田村さんは謝罪会見で「テープ回して(録音して)ないやろな。(会見したら)全員首にするから」との岡本昭彦社長の発言を明らかにした。社長も自らの発言を認め「身内意識から出た」「(テープは)冗談だった」と釈明した。

 疑似家族を打ち出し、上下の濃密な人間関係をちらつかせて相手を封じ込める発言であり、パワハラ以外の何物でもない。しゃれが重視される世界だけに「冗談」の言い訳は本当にたちが悪い。

 吉本興業は近年、事業を多角化し国や自治体との仕事も多いが、一連の騒動を振り返ると社会的に成熟した企業とは思えない。反省の上に立った意識改革が急務だろう。

2019年7月31日 無断転載禁止