家族法制見直し/時代の変化に目配りを

 離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定するなどと定める民法の「嫡出推定」規定を見直すよう法相から諮問を受けた法制審議会部会の初会合が開かれた。この規定は120年以上も前の明治時代、生まれた子の戸籍上の父親を早く確定させ、子の利益を図るために設けられた。しかし時代にそぐわなくなり、弊害が出てきた。

 例えば家庭内暴力で別居中か離婚直後、女性が別の男性との間に子をもうけると、300日規定で前夫の子とみなされる。これを避けようと出生届を出さないと、子は無戸籍者になる。住民票がなく、進学や就職、結婚などで多大な不利益を強いられる。

 6月時点で無戸籍者は830人。約8割は嫡出推定が原因とされる。法務省の有識者研究会は先に、女性が離婚して300日以内に出産した子について、その時点で再婚していない場合は前夫の子、再婚していれば現夫の子とみなす-などとする見直し案を公表している。これも参考に法制審部会は議論を進める。

 国連の女性差別撤廃委員会から完全廃止を勧告されている女性の再婚禁止期間や、生殖補助医療を巡る親子関係なども論点になるとみられ、家族に関わる法制が大きく変わる転機となるだろう。無戸籍問題にとどまらず、女性の社会進出など時代の変化に目配りすることが求められる。

 離婚や再婚が珍しくなくなるなど時代の変化によって、民法はさまざまな点で実生活に合わなくなり、改正が重ねられてきた。2013年、結婚していない男女間の子の遺産相続分を法律上の夫婦の子の半分とする規定が削除され、18年に男女の婚姻年齢が統一された。16年には女性の再婚禁止期間が6カ月から100日間に短縮された。

 そうした中、嫡出推定規定は存続した。結婚から200日経過後か、離婚から300日以内に生まれた子は婚姻中に妊娠と推定する制度だ。妊娠中の女性が離婚と同時に再婚した場合、201日目から300日目に生まれた子の父親は前夫とも現夫とも推定されることから、混乱を避けるため100日間の再婚禁止期間が設けられている。

 300日規定を巡り有識者研究会は、出産時点で再婚していれば、例外規定として現夫の子とすべきだと提案。200日規定については、妊娠をきっかけに結婚する夫婦が増え、結婚後200日以内に生まれた子も現夫の子とみなすとする。

 これにより女性が妊娠中の場合、再婚禁止期間は不要と結論付けた。

 ただ、その通りに議論が進むとは限らない。再婚禁止期間を巡っては、法制審が1996年に100日間への短縮を選択的夫婦別姓制度の導入とともに答申したが、保守派が「伝統的な家族観を壊す」と反発。「100日以上は違憲」とした最高裁判決を経て実現するまで20年かかった。

 さらに今回は嫡出推定否認の訴えを夫だけでなく母親や子にも認めるか、生殖補助医療で生まれた子にも嫡出推定は及ぶかなどの課題もあり、議論はより複雑になるだろう。

 先の参院選では女性が28人当選したものの、女性と政治の距離もなかなか縮まらない。女性の社会進出の壁となっている制度の在り方を真剣に検討する必要がある。

2019年8月5日 無断転載禁止