渋野選手全英優勝/挑戦意欲が輝いた

 これほど伸びやかに競技し、主要な国際大会で優勝した新鋭選手はゴルフ以外でも少ないのではないか。昨年の夏にプロテストに合格したばかりの20歳の渋野日向子選手がメジャー大会の全英女子オープンで優勝した。

 四大大会どころか、海外の試合に出場すること自体が今回初めてだったから驚く。手堅くプレーするのではなく、積極的にバーディーを狙い続けた姿勢が印象的だった。

 優勝争いの中、グリーンの手前に池があるホールでも気後れせず、力強いショットでスコアを伸ばした。失敗を恐れず、持ち前の長打力を信じてクラブを振る姿には輝くような挑戦意欲が表れていた。

 最終ホールは数メートルのバーディーパットを残し、一発で入れれば優勝、3パットのボギーとすれば2位という状況だった。「ここで決めるか(さもなければ)負けるかだ」と、この正念場でも危険を恐れずパットを強く打ち、鮮やかに沈めた。

 ゴルフを始めた頃は負けず嫌いで、うまくいかないと、よく不機嫌な顔になったという。指導者から、どんなときも笑顔でやりなさいと諭され、胸を張って競技する姿勢を身に付けた。

 学校の部活などでは暴力を伴う指導、あるいは指導とはとても呼べない暴力行為がいまだにやまない。そんな状況があることを思えば、渋野選手はジュニア時代の指導者に恵まれたことを誇りにすべきかもしれない。

 渋野選手は国内で今季2勝を挙げ、五輪に出場する日本代表選手の候補となる展望が開けてきたところだった。

 メジャー大会で上位に入れば、世界ランキングを大きく上げることができる。本人は「そのためにも重要な大会」と位置付けていた。それが、誰もが驚く優勝となって一躍、五輪出場の有力候補に名乗りを上げた。

 他の競技に目を転じれば、先の世界水泳選手権の男子競泳2種目で優勝した瀬戸大也選手のように、五輪出場内定選手が出始めている。優秀な選手は皆、できれば早く五輪の出場資格を確保したいと望んでいる。

 渋野選手は今大会を世界の強豪に対して、どこまで通用するか確認する舞台と考えていただけではなかった。大会への意気込みにも表していたように、自国開催となる来年の東京五輪にぜひ出場したいとの思いが、大きなモチベーションとなっていたに違いない。

 バドミントンでは男子シングルスの桃田賢斗選手、女子シングルスの山口茜選手がいずれも世界ランク1位だ。

 今後の変動も十分に考えられるが、ランキングが上位の選手はそれを落とさないように、下位の選手はそれを上げようと、息の抜けない大会を続けていくことになる。

 それは五輪出場を確かなものにするための大切な準備であって、同時に実力を向上させる絶好の機会でもある。

 五輪のレガシー(遺産)とは、必ずしも大会閉幕後に形作られるものではなく、大会開幕前から徐々に形成されていくものなのだろう。

 五輪競技の選手の国際的な活躍とその喜びは今、市民に大きな関心と共感を呼び起こしている。渋野選手の優勝も、ゴルフと五輪の両方の関心を高めることにつながるはずだ。

2019年8月7日 無断転載禁止