島根の小さな拠点づくり/県のリーダーシップを

 島根県が人口減少対策として取り組んでいる「小さな拠点づくり」が進んでいない。

過疎化が進む中山間地域や離島の公民館単位で廃校などを活用して商店や診療所といった機能を集約させ、複数の集落が連携して地域づくりを図る狙いだが、地域の取り組みは限定的だ。

 雲南市掛合町波多地区では、地元に小売店がなくなったのを受け、16自治会の住民らでつくる自主組織・波多コミュニティ協議会が、2014年10月、交流センター内に小売店「はたマーケット」を開設。センター近くには出張診療所もあり、診察帰りに立ち寄る住民も多い。地区内限定で送迎用の車両も運行しており、買い物拠点の出現は、地区に新たな人の流れをもたらした。

 県は波多地区の活動をモデルケースに位置付けるが、こうした積極的な活動はわずかしかない。

 県が昨年実施した中山間地域実態調査によると、公民館単位を基本に小さな拠点づくりの対象となる236地区のうち、配食や移動販売など生活機能維持を含めた活動をしているのは半分以下の111地区。

 商業施設を設けるなど拠点化に向けた取り組みまで踏み込んでいるのは、波多地区や飯南町志々地区など数えるほどにとどまっている。

 どんな事業を実施するかは住民同士の話し合いに委ねているが、住居の移転を伴ったり、商店の運営や施設の統合などはハードルが高いようだ。

 実態調査に答えた236地区2793集落の代表のうち、小さな拠点づくりについて「知っている」としたのは2割足らず。周知不足の実態が明らかになり、今後活動を広げるために取り組み事例を積極的に紹介するなど周知方法を工夫してほしい。

 積極的に取り組んでいる地域に共通しているのは、住民らが地域の現状と将来について話し合いを深め、危機感を共有していることである。地域のリーダーの姿勢によって活動の濃淡も浮き彫りになっている。

 生活機能が失われて存続が危ぶまれる県内の限界集落は4年前から200以上増の739。中山間地域集落の21%を占め対策は待ったなしだ。

 これまでの調査で人口2千人以上の公民館単位ではスーパーや診療所、介護施設、金融機関などがそろっている所が多かった。一方、500人未満になると、必要な施設が欠ける傾向が明らかになっている。

 生活圏として人口2千人が目安となっているが、人口減に伴って目安に届かない公民館単位が増えている。

 このため、県は複数の公民館単位でサービスを維持する方向への展開を目指し、来年度から5年計画でモデル地区を選定して事業を進める。

 しかし広域化するだけではサービスを広く薄めるだけになりかねない。生活の足の確保を中心に実効性のある中身にして、水準を維持してほしい。

 地域の維持、活性化には市町村や地元住民の熱意が欠かせないが、それを促す県のリーダーシップも不可欠だ。まず住民が地域の現状を知り、できることから始めるべきだが、生活機能集約を含め、官民で将来の街づくりを描いておくべきだろう。

2019年8月14日 無断転載禁止