学校などの敷地内禁煙/例外が多く不十分だ

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が7月から一部施行され、学校や病院、行政機関などの敷地内が原則禁煙になった。しかし例外として屋外喫煙所を設ける施設も多く、目標とする全面禁煙には遠い。受動喫煙による健康被害をなくすために、さらに努力が必要だ。

 改正法は、健康への影響が大きい未成年者や病気の人、妊婦らが利用する学校、病院、行政機関、児童福祉施設の敷地内を原則として禁煙とすることを義務付けた。屋内は完全禁煙となるが、屋外は間仕切りなどで明確に区分していれば、例外的に喫煙所を設置することができる。

 改正法の問題点は、この例外規定が抜け道となっていることだ。法の原則は敷地内全面禁煙で、厚生労働省と人事院は屋外喫煙所を「推奨しない」との通知を出している。だが現実には屋外喫煙所を設けている役所や大学が多い。

 共同通信の調査によると、中央省庁や都道府県の本庁舎のうち敷地内を全て禁煙にしたのは、すでに実施していた府県を含めて2省、10都府県にとどまり、大半は屋内の喫煙所を廃止する代わりに屋外喫煙所を設置した。

 規模の大きい大学を対象にした別の調査では、全面禁煙に移行した大学は少数で、多くの大学が既設の屋外喫煙所を存続させることを選んだ。

幼稚園や小中高校、病院は、以前から敷地内全面禁煙を採用しているところが多い。

 屋外喫煙所は受動喫煙被害ゼロを目指す法の趣旨とは相いれない。たばこを吸った後も呼気から有害物質が出るため、喫煙所から戻れば周囲の人に害を及ぼす上に、掃除する人の健康被害も無視できないからだ。屋外喫煙所を導入した役所や大学には再考を求めたい。

 ただし、屋外喫煙所の選択にはやむを得ない面もある。完全に禁煙にすると、敷地外での路上喫煙が増えて近所迷惑になることなどを心配している役所や大学が多いとみられる。実際、周辺での喫煙や吸い殻の投げ捨てに住民から苦情が相次いだ例がある。

 こうした敷地外の喫煙を防ぐ対策の一つは、公共空間に「公衆喫煙所」を整備することだ。これに対しても、近くを通る人の受動喫煙が防げないとして近隣住民から反対の声が上がったケースがあるが、喫煙所を気密性の高い構造にすることなどで対応できないか。厚労省や自治体は知恵を絞ってほしい。

 問題がもっと大きいのは、改正法が全面施行される来年4月以降の状況だ。飲食店や職場、公共交通機関などが原則として屋内禁煙となるが、喫煙専用室は設置できる上に、客席面積100平方メートル以下などの飲食店には当面の経過措置として例外的に喫煙を認める。

 厚労省の試算では、喫煙専用室を設けなくてもたばこが吸える飲食店が全体の55%に上る。原則より例外の方が多いわけで、これでは健康被害は防げない。改正法の全面施行後、例外とされる飲食店の範囲を縮小することを皮切りに、厚労省はできるだけ早く規制強化に着手するべきだ。

 世界保健機関(WHO)によると、2017年時点で公共の場所全てを屋内全面禁煙としている国は55カ国ある。この厳しい規制が世界標準であることを改めて肝に銘じたい。

2019年8月16日 無断転載禁止