長引く香港デモ/過激な抗議は支持失う

 香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を巡り、完全撤回を求める香港のデモは2カ月余り続き、一部のデモ隊が空港を占拠して航空便を欠航させたり、中国の記者に暴行を加えたりするなど過激化してきた。

 背景には、改正案の完全撤回を拒否し、催涙弾を使用してデモ鎮圧を図り多数の負傷者を出すなど、強硬な香港政府への反対派の反発がある。一連のデモの逮捕者は約700人にも上った。

 1997年、英植民地香港が返還された際、中国は「一国二制度」と「高度な自治」を約束した。市民はこれらの原則が有名無実となり、本土の非民主的な政治制度が香港に広がってくることに強い危機感を抱く。

 中国・香港両政府は世論に耳を傾け、香港の「高度な自治」を保障して市民の疑念払拭(ふっしょく)に努めなければならない。

 また、デモは平和的、合法的に行うべきで、反対派は過激な抗議に走れば、やがては一般市民や国際社会の支持を失ってしまうことを肝に銘じるべきだ。

 香港政府は6月中の改正案採決を目指したが、大規模デモなど激しい抗議を受け、無期限の改正延期を発表した。しかし反対派は完全撤回を求めて立法会(議会)や中国政府の出先機関を襲撃した。

 8月に入ってデモ隊は2週連続で香港国際空港を占拠。12日以降約千便が欠航した。一部の若者は空港内で中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報電子版の記者ら2人に集団で暴行を加えた。

 暴行の様子は地元テレビが放映。中国政府は「テロに近い行為」「最も強烈に非難する」との声明を発表した。暴行は中国だけでなく香港や海外の人々の反感を呼んだ。

 中国政府は7月末の記者会見で、警察のデモ隊排除を支持する一方で、香港政府の要請があれば現地の中国軍の出動が可能との考えも示した。暴力や社会の混乱を招く過激な行動は武力を行使する口実にされかねない。

 1989年6月、北京で軍が民主化運動を武力で弾圧。多数の死傷者が出た天安門事件の再演は絶対に避けなければならない。警察、デモ隊の双方が暴力を控えるべきだ。

 中国高官は「米国など西側諸国が扇動している」「乱暴な内政干渉」と非難。トランプ米大統領は「米情報機関によると、中国は香港との境界に向け部隊を展開している」として、中国の習近平国家主席に「人道的な解決」を求めた。

 米中の貿易摩擦が長引く中で、香港のデモも両国の新たな火種となった。米中両国は自制し、香港の混乱収拾に向けて対話し、協力すべきだ。

 長期化、過激化するデモは香港経済にも深刻な打撃を与えている。日本や米国、オーストラリアなど約30の国・地域が香港への渡航者に注意を呼び掛ける情報を出し、8月初旬の観光客は前年比で3割余り減少、小売売上高も下がった。

 香港政府トップの林鄭月娥行政長官は「自由と正義の名で、多くの違法行為が行われている」と過激なデモを非難するが、中国・香港両政府は強権的な手法だけで、治安を維持するのは難しいことを理解しなければならない。改正案の完全撤回に応じて事態の収拾を図るべきだ。

2019年8月19日 無断転載禁止