米大統領選/充実した政策論議を

 トランプ米大統領が再選を目指す来年11月の大統領選挙の戦いが始まった。トランプ政権の対外政策は中国との関税合戦や北朝鮮との異例の首脳会談、さらにはイランに対する圧力政策など国際社会を混乱させている。

 日本との関係でもトランプ氏は日米安全保障条約への不満を表明、貿易協議でも大幅な譲歩を促すなどしている。米国第一のトランプ氏が再選されるかどうかで、日本の対外政策は大きく変わる。

 米大統領選は候補者個人のスキャンダルや人種、宗教的な課題に注目が集まりがちだ。今回の選挙結果次第で米国の衰退はさらに加速し世界は一層の混乱に陥ってしまう懸念がある。充実した政策論議を行ってほしい。

 トランプ氏は6月18日に激戦州のフロリダ州で行った再選への出馬表明で、環太平洋連携協定(TPP)や温暖化対策のパリ協定からの離脱などを1期目の実績としてアピール。中国との対決姿勢も強調した。米国第一の外交の継続に国際社会は不安を抱く。

 内政では、メキシコ国境の壁建設など不法移民対策を公約に掲げた。銃所持の権利擁護や中絶禁止の徹底など保守層向けの施策を並べた。

 トランプ氏の再選戦略は岩盤支持層と呼ばれる白人保守層を固めることにある。一般に2期目の大統領選では野党が受け入れるような公約を打ち出して幅広い票の獲得を目指すが、トランプ氏は中道派を取り込む意欲を示さない。

 与党の共和党支持層の中で80%を超す支持率を維持しており、岩盤支持層だけでも再選できると判断しているのだろう。政権内も国際協調派や野党民主党との協力を模索する高官らは辞任し強硬派ばかりが並ぶ。

 トランプ氏は、選挙に有利になるかどうかで政策や言動を決める姿勢が鮮明である。非白人女性議員に対する「国に帰れ」発言からは、国民の分断は岩盤支持層を結束させ自分の票になるとの意図がうかがえるし、外交では同盟国の反発も意に介さない。

 テキサス州では3日、白人の男がヒスパニックの「侵略」への攻撃として乱射事件を起こした。トランプ氏の人種差別を容認するような言動が米国内で少数派への憎悪犯罪を増加させているとの見方が出ている。

 また短距離弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮をトランプ氏が問題視しないのは、「業績」とアピールする金正恩(キムジョンウン)委員長との関係を壊さないためではないか。北朝鮮のミサイル能力の増強は日本の安全保障上の脅威であり、もっと真剣に取り組むべきだ。

 一方の民主党は路線対立が激しさを増している。格差など米国の抱える構造的な問題を大胆な政策で解決すべきだとする勢力と、多数派の国民の支持を集めてトランプ氏に勝つ可能性の大きい候補を選ぼうという勢力の争いだ。

 候補者の乱立から民主党の先行きを危ぶむ声が出ているが、オバマ、クリントン、カーターら過去の同党大統領はいずれも選挙戦序盤では最有力候補でなかった。

 トランプ氏は就任以来支持率が50%を超えたことはなく、2年半で都市部や郊外を中心に女性や少数派の反発が強まっている。今回も接戦となるだろう。米国民は大統領選がもたらす世界へのインパクトをもっと意識すべきだ。

2019年8月20日 無断転載禁止