目黒虐待死判決/安全網の立て直し急げ

 東京都目黒区で昨年3月、5歳女児を元夫とともに虐待し、死亡させたとして保護責任者遺棄致死の罪に問われた母親の裁判員裁判で、東京地裁は懲役8年の判決を言い渡した。求刑は懲役11年。女児は元夫に繰り返し暴行されたが、母親は放置。十分な食事も与えず、衰弱しても虐待の発覚を恐れ、病院に連れて行かなかったとされる。

 元夫は女児への傷害罪にも問われ、来月初めに初公判が開かれる。この事件をきっかけに政府は、虐待通告から48時間以内に子どもの安全を確認できない場合、児童相談所が立ち入り調査を行うルールを決定。児相が子どもを親から引き離し一時保護する「介入」強化も打ち出した。

 しかし、その後も今年1月に千葉県野田市の小学4年女児、6月に札幌市の2歳女児と虐待死は後を絶たず、8月には鹿児島県出水市で4歳女児が亡くなり、警察は虐待の疑いがあるとみて捜査している。一連の事件では、介入と保護者支援という役割を併せ持つ児相が支援の方を重視するあまり、介入に踏み切れない傾向が見て取れる。

 さらに児相と警察、自治体との間で情報共有と連携が十分になされず、対応の経緯を巡る説明に食い違いも出ている。なぜ救えなかったのか。幼い命が失われるたびに繰り返される問いに一つ一つ答えを出し、安全網の立て直しを急がなければならない。

 目黒区で亡くなったのは船戸結愛(ゆあ)ちゃん。ノートに「もうおねがい ゆるして」などと書き残していた。裁判で母親の優里被告は起訴内容を認め、元夫の報復が怖くて警察に通報できなかったと説明。弁護側は「執拗(しつよう)な心理的DV(ドメスティックバイオレンス)を受け、抵抗するのは困難だった」と主張した。

 地裁判決は「重篤な状態に陥っているのを認識しても、医療措置を受けさせなかった不保護の態様は強い非難に値する」と指摘。元夫の心理的DVについては「責任を大幅に減じるほどの事情とみることはできない」とした。

 厚生労働省の検証結果によると、一家が昨年1月まで住んでいた香川県の児相は結愛ちゃんを2度も一時保護しながら施設入所を申し立てず、東京都の児相には詳しい虐待情報を引き継がなかった。都の児相は緊急性が高いケースと判断せず、保護者との関係構築を優先。優里被告に結愛ちゃんとの面会を拒まれ、本人の安全を確認できないうちに事件が起きた。

 政府は「48時間ルール」の徹底を求めたが、札幌市の池田詩梨(ことり)ちゃんが衰弱死した事件で児相は安全確認を行わず、警察から母子との面会に同行を要請されても、人員不足を理由に断った。野田市の栗原心愛(みあ)さんの事件でも、安全確認の不十分さが指摘されている。

 保護者との関係構築を考えて介入をちゅうちょすることがないよう、来年4月から施行される改正児童虐待防止法は、介入と保護者支援を担当する職員を分けると定めている。ただ同じ児相内で担当職員や部署を分けても、どこまで実効性があるかは不透明だ。互いの情報共有に支障が出ないかという懸念もある。

 児相はリスク判断と介入に特化し、市町村が支援を引き受けるという案もあり、関係機関の連携とともに、さらに検討を重ねる必要がある。

2019年9月18日 無断転載禁止