夕景と美術館

 たそがれ時になると人々が岸辺に集う。湖面に日脚が伸び、空と水が青からオレンジ、紫色へと多彩に移ろう。宍道湖の夕景は土地に暮らす人たちをはじめ、旅人を魅了してきた▼「日本の夕陽百選」にも選ばれた景勝の地に、島根県立美術館(松江市袖師町)が開館し、今年で20周年を迎えた。水と調和する美術館として、水を描いた国内外の絵画や版画などを収集。3月から9月は日没後30分まで開館する運営が、自然と融合した美術館として話題になった▼1999年3月6日にオープン。開館記念展「水の物語-ヨーロッパ絵画にみる神話と象徴」には、目標の5万人に対して11万人が訪れた。今年3月末までの総来場者数は565万人。地方の公立美術館では、国内有数の実績を誇る▼20年の大きな成果が、作品寄贈が相次いでいることだ。島根県津和野町出身の研究者・永田生慈さんが収集した浮世絵師・葛飾北斎の作品など千点は質量ともに世界屈指。鳥取県琴浦町出身の芸術写真家・塩谷定好の作品なども千点に及ぶ。美術館の保存展示と研究実績が高く評価されている証しだ▼現在開催中の開館20周年記念展「黄昏(たそがれ)の絵画たち」ではモネや高橋由一らの作品180点が並ぶ。洋の東西を超え、夕景が画家たちを魅了し創作意欲をかき立てた姿がうかがえる。秋は宍道湖の夕日がとりわけ美しい季節。絵画とともにゆったりと楽しみたい。(道)

2019年9月19日 無断転載禁止