鳥取のサグラダ・ファミリア

 鳥取市が進める鳥取城跡の石垣修理が開始から60年たった。1943年の鳥取大地震で被災。修理箇所が多く、終えたのは半分程度と聞いて驚いた。二ノ丸三階櫓(やぐら)の復元が懸案で着手時期未定なのはよく知られるが、石垣修理に半世紀以上費やしたとは。なかなか完成しない建築として有名なスペインのサグラダ・ファミリア教会を思い浮かべた▼鳥取城跡は中世の山城と近世城郭の顔があり、城の変遷をうかがえる。石垣が崩れないよう江戸後期に加えた補強用石垣「巻石垣」も修理の歴史を伝えるとして復元した市の判断はこの特徴に通じる▼鳥取城跡内には明治期の洋館・仁風閣や鳥取県立博物館があり、藩主の御殿があった三ノ丸に立つ鳥取西高校はかつて移転論争が起きた。市文化財課の担当者がこれら近代以降の建物も城跡の歴史の一部と受け止めるのは新鮮だ。鳥取城跡は街の歴史も物語る▼サグラダ・ファミリア教会の設計者ガウディは生前、いつ完成するのかと問われ、「神は急いでおられない」と答えたという。自ら完成を見届けられないほどの大事業として気合を入れたことだろう▼鳥取城跡の整備も大事業だ。多額の費用が必要な二ノ丸三階櫓の復元は是非が問われ、鳥取西高の移転論争も将来再燃するだろう。ずっと夢を抱かせ、議論の種になる鳥取城跡の存在をあらためてありがたく思う。石垣を眺め、関心を寄せ続けたい。(志)

2019年10月9日 無断転載禁止