8月の景気動向指数/警戒を怠らずに運営を

 8月の景気動向指数(速報値)の基調判断が、景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に下方修正された。

 日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)でも大企業製造業の業況判断指数(DI)が3四半期連続で悪化。1日からの消費税増税も、さまざまな負担軽減策が施されているものの、景気を圧迫する要因になり得る。

 米中貿易摩擦などによる海外経済の変調が、日本の実体経済に本格的な影響を及ぼし始めたとみるべきだろう。

 デフレ脱却道半ばで、景気が腰折れすれば、好調に推移してきた企業業績や良好な雇用情勢などに悪影響を与え、それが個人消費や企業の設備投資などを冷え込ませる悪循環に陥る恐れもある。政府には警戒を怠らない経済政策運営を求めたい。金融政策を担当する日銀も、市場や経済指標の変化に目を凝らし、適切に対応しなければならない。

 日本経済は今回の消費税増税によって、財政赤字の削減に向けた新たな第一歩を踏み出したばかりだ。歳出増には抑制的な態度を維持することが基本だが、景気失速の恐れが明らかになれば、「止血」が必要になる局面が出てくるだろう。その際は、ためらうことなく迅速に対策を打ち出さなければならない。

 危機対応の中で、政策を円滑に遂行するには、景気の現状を政府がどう見ているかを国民に分かりやすく説明する必要がある。「景気は緩やかに回復している」というのが、政府の認識だが、今回の景気動向指数の下方修正や、日銀短観とは明らかに方向感が異なると言わざるを得ない。

 需要喚起策を実行するのなら、景気認識を改める必要があるだろう。失政批判を恐れ「緩やかに回復している」との判断を維持し続ければ、政策を打ち出すタイミングを逸してしまいかねない。根拠を欠いたまま拙速に判断する事態は避け、各種の経済指標を十分勘案した上で、遅滞なく対応することが肝心だ。

 政府は2019年度補正予算の編成に向けた作業に入ったが、必要に応じ景気対策を盛り込むことが検討課題になるだろう。秋口からは、米中貿易摩擦による海外需要の減退に加え、英国の欧州連合(EU)離脱問題が世界経済を揺さぶることが懸念される。海外発の混乱要因が増大されるわけで、日本経済も無関係でいられるはずはない。

 日本経済に対する下押し圧力がどの程度になるのかを見極めなければならないが、対応が短期では収まらないようであれば、19年度補正に続けて20年度当初予算での対応も考慮に入れた方がいいだろう。

 実体経済へのてこ入れもさることながら、市場の乱調への備えも課題になるだろう。米国が利下げに踏み切って日米金利差が縮小、円が買われやすい状況になっているものの、円高圧力はそれほど強くはなく、小康状態が保たれている。だが何らかのきっかけで相場の均衡が崩れることは、これまでにもあった。

 海外需要減退に、円高による輸出不振が加われば、自動車産業を中心とした日本経済の屋台骨が揺らぐ。円高への耐性を強化することは長期的な課題だが、急激な市場変動への対応も必要だ。政府、日銀は準備を怠りなく進めなければならない。

2019年10月9日 無断転載禁止