世事抄録 たばこの煙

 消費税の引き上げに伴い、10月からたばこが1箱当たり10円引き上げられた。昨年10月にたばこ税増税による値上げ以来2年連続となる。昨年500円の大台に乗ったセブンスターやピースは510円となり、もはや高級嗜好品となった。

 以前は1日に40本吸うヘビースモーカーだった。当時はまだ愛煙家が多かった職場も急速に喫煙環境は狭まり、廊下の端の喫煙所はいつも満員。紫煙がもうもうと立ち上る中で、「健康に悪いなあ」とぼやき合っていた。前回のたばこ税増税による値上げは2010年10月1日。何だかアホらしくなり、その日を境にスパッとたばこと縁を切った。

 平成の初めにフランスへ出掛けた時は、スタイルの良いパリジェンヌがくわえたばこで、ポイ捨てしている光景をパリのあちこちで見てあっけに取られた。10年前にスイスを訪れた際は屋内では喫煙できず、少し良いたばこはひと箱が800円から千円だった。日本でも禁煙の流れが加速。最近では非喫煙を採用条件にする企業も増えてきているようだ。

 愛煙家だった作家の故藤本義一さんは「トルコ人は水たばこのたなびく煙に人生を感じるらしい」と語りながら目の前でうまそうにたばこをくゆらせたが、そんな光景も過去のものとなった。急速に絶滅危惧種化していく愛煙家の置かれた状況を見ていると、受動喫煙問題が世の流れと知りながらも、昔のよしみでいくばくかの同情を禁じ得ない。

(出雲市・呑舟)

2019年10月17日 無断転載禁止