寒いソウルで見つけた温かいコト/日本観光維持に熱い思い

 山陰インバウンド機構代表理事 福井 善朗

 第6回日韓フォトコンテスト(在韓国日本大使館公報文化院主催)の表彰式典に出席するために、ソウルに行ってきた。

 コンテストは日韓両国の写真愛好家が互いの国の魅力を収めた写真を競うもので、写真を通じて両国が相互に新しい魅力を発見することを目的としている。当機構が昨年に続いて提供した「山陰賞」のプレゼンターを務めてきた。

 受賞したのは、松江市に国際交流員として勤務する朴(パク)智慧(チヘ)さんの作品。「神の遊戯」と題した石見神楽のダイナミックな写真は、式典会場によく映えた。残念ながらご本人の出席はかなわなかったが、代理で賞を受け取ってくれた母上のうれしそうな笑顔が実に印象的だった。

 受賞作品の発表は続いた。火災前の首里城の夜景を収めた作品は、沖縄県賞に選ばれた。「再建されたら真っ先に訪れ、美しい写真を撮りたい」とのコメントに、撮影者の想(おも)いが重なった。

 青森県賞を獲得したのは、八甲田山の樹氷の遠望風景で「撮影のタイミングをじっと待った」だけの価値は確かにある。1時間余りの式典だったが、各受賞者のコメントに聴き入っていて、全く長くは感じなかった。全員が「また、日本に行って写真を撮りたい」とあいさつしてくれた。

 式典の合間を縫って、ソウル市内の旅行会社を複数訪ねた。いずれも日本向けの旅行を扱っている会社で、山陰のことも熟知している担当者に会って直接話を聞くことができた。今回の出来事で各社とも売り上げが激減して打撃を受けているのはもちろんだが、今後に向けてもなかなか打開策を打てずにいることが分かった。現状の数字(業績)を聞いていてつらくなった。

 でも、彼らは前を向いていた。今できることに一生懸命取り組んでいた。日本向けの個人旅行を扱う某社は、航空路線が維持されている九州や沖縄に行き先を絞って、日本向けの旅行商品の数が減らない工夫をしていた。大手の女性スタッフは、鳥取が大好きだと前置きしたうえで、岡山空港を使った山陰ツアーに申し込みが来ていることを誇らしげに話してくれた。

 日韓の観光交流はなかなか復旧のめどが立たない。両国政府の関係悪化で両国間の渡航需要は減少し、航空座席数も縮小。月間100万~120万席(片道ベース)から、9月には15%減、10月以降も減少が続き、すでに訪日韓国人旅行者数は直近の10月で65・5%減の19万7300人に。2カ月続いての約6割減で、1~10月の累計では18・1%減の513万1600人となっており、2019年通年の着地は、18年の754万人には大きく届かない見込みだ。

 冬のソウルは想像通り寒かった。手足の指先から冷えこんでくる感じは半端ない。でも、温かかった。なにより私が話を聞けた韓国の人々の「日本に対する想い」は、想像以上に温かかった。

 春はもうすぐやってくる。次回のフォトコンテストには山陰の桜の名所を撮った自信作が並ぶに違いない。

 …………………………

 ふくい・よしろう 長崎市出身。1980年に近畿日本ツーリスト入社し、国内旅行部などを経て地域振興部を設立。着地型観光の「ニューツーリズム人材養成講座」を各地で運営した。2007年、角川マーケティングとの共同出資で観光開発会社ティー・ゲートの立ち上げに参加。13年に神奈川県観光担当課長に就き、16年から現職。

2019年12月29日 無断転載禁止