イランの米基地攻撃/両国が理性的行動を

 イランが革命防衛隊司令官殺害の報復としてイラクにある米軍駐留基地を多数のミサイルで攻撃。報復のエスカレートによる本格的な軍事衝突の懸念が強まっていたが、トランプ米大統領は8日、軍事的報復をしないと表明した。米国が軍事作戦に踏み切れば全面衝突に発展しかねない状況だったが、報復の連鎖はひとまず止まった。

 ただ、基本的な対立の構図は変わっておらず、不安定な情勢は当面続く。日本も含め国際社会は、両国に引き続き理性的な行動をとるよう求めるとともに、永続的な安定に向けた国際的な交渉の枠組みづくりにも全力を挙げたい。

 イランによる攻撃は、これまでの外国にいるシーア派民兵組織を使った「代理攻撃」でなく、イランが国家として米軍を攻撃したものだ。3日の米国によるイラン司令官殺害と合わせて、両国はいわば国家間の戦闘行為に踏み出していた。

 世界最大の軍事力を持つ米国に対して、中東の大国であるイランは地域一帯でシーア派の民兵組織を擁し、米軍が駐留する基地をいつでも攻撃できる態勢にある。日本も依存する石油や天然ガスの生産地が集中するペルシャ湾地域での緊張は「今世紀で最も高いレベル」(グテレス国連事務総長)に達していた。

 攻撃後、イランの対話派であるザリフ外相は「均衡の取れた自衛措置」の「完了」を明らかにした。同じく対話派のロウハニ大統領の顧問は「米国が攻撃すれば、地域で全面戦争が起きるだろう」と米国に反撃をしないよう求めている。米国との戦火を避けたい本音は明らかで、イラン政府筋によると、イランは攻撃直後、米国の利益代表を務めるスイスを通じて米国に「反撃しなければ攻撃は続けない」との書簡を送付していたとされる。

 ただ、革命防衛隊の強硬派が今回の攻撃で満足するとは限らない。革命防衛隊は米軍の反撃があれば、今度はイスラエルをも攻撃すると明言している。ペルシャ湾を航行する各国のタンカーやサウジアラビアの石油施設なども攻撃対象となる可能性があり、そうなれば、制御できない混乱に発展する。

 トランプ大統領は当初、深慮なく司令官殺害を決め、外交・安全保障の高官らも反対しなかった。しかしイランのミサイル攻撃後、ポンペオ国務長官やエスパー国防長官らと共に声明を発表した際は、イランからの攻撃が止まったのを念頭に「イラン側も停戦しているようだ」と指摘し、「軍事力は使いたくない」と明言した。

 国際社会は米国、イラン双方に軍事攻撃の自制を呼びかけるとともに、緊張の原因となるイランの核開発や中東のシーア派民兵への支援問題などを包括的、建設的に話し合う場を提案すべきだ。

 今回の危機は、米国がイラン核合意から一方的に離脱したことから始まった。米国には引き続き反撃回避を求めるとともに、イラン核合意の意義を認め、イランに対する経済制裁を見直す柔軟な姿勢をとるよう求めたい。

 安倍晋三首相は「(トランプ大統領の)自制的対応を評価する」と述べた。日本はイランと米国の双方との関係を重視する立場で対応してきた。改めて双方に自制を働きかけたい。

2020年1月10日 無断転載禁止