竹島問題の奇妙さ/ようやく始まった脱却の動き

 島根県竹島問題研究会研究委員 藤井 賢二

 竹島問題は奇妙な問題である。

 自国の領土が奪われているにもかかわらず、多くの日本人に被害者意識はなかった。「正直、竹島問題はよくわからないので関わるのはできたら避けたい」という、ある報道関係者の声を聞いたことがある。

 竹島の領有根拠を韓国と争った時、日本の優位は動かない。17世紀の米子の大谷(おおや)・村川家の経営の記録、正確な知見、江戸幕府が両家の活動を認めていたこと。当時の朝鮮には竹島を経営した明らかな記録はない。

 日本は1905年の島根県編入と、その後の実効支配によって国際法の見地からも竹島の領有を確実にしたが、韓国はそれ以前に自らの領土だったことを示すことはできない。さらに、戦後のサンフラシスコ平和条約で、竹島は日本の領土に残った。

 日本にはこうした3枚の持ち札があるのに、韓国には持ち札そのものがない。にもかかわらず、韓国は当然のように竹島を不法占拠し続け、問題の平和的解決を求める日本の訴えにすら耳を貸そうとしない。加害者に加害者意識がない。

 最も奇妙なのは、日本は被害者ではなく加害者だという声があることである。韓国だけでなく日本でも、「独島は日本の侵略による最初の犠牲の地」という韓国の主張に理解を示し、竹島は韓国領だとする本を探すことができる。

 この奇妙さは半世紀前にすでにあった。65年11月5日付「島根新聞」に、当時島根県総務課職員だった竹島問題の専門家、田村清三郎氏へのインタビュー記事がある。

 竹島問題では「日本側に確かな証拠が欠けている」という誤解があると、彼は指摘する。江戸時代の「竹島」は鬱陵島であることすら知らず「江戸時代の日本地図を発見すると、鬼の首でもとったように騒ぎ立てる一部の国民」がいると、彼は批判する。

 これは、林子平の「三国通覧輿地路程全図」のことである。この年の『エコノミスト』誌(毎日新聞社)8月24日号の記事「林子平の竹島地図」は、「竹島」に「朝鮮之持物」という説明があるため、「日本海の小島“竹島”(韓国の呼称は独島)の領有権について、明瞭に朝鮮領と記載」と紹介し、「竹島の帰属をめぐって日韓条約の批准にも微妙な影響を投げかけそう」だと結んでいた。

 「朝鮮側の主張もよく知らずに、全面的に韓国の主張が正しく、日本政府のいいぶんはウソであると考えて新聞に投書する一部国民の考え方には問題がある」と、田村氏は続ける。

 「日本政府のいいぶんはウソである」と頭から決めつけて、平気な雰囲気があった。日本を大切にしないことが格好の良いことのように感じる気分があったのだ。しかし、平和到来と喜んだはずの冷戦終結から30年、各国が国益追求の姿勢をあらわにする今、竹島問題の奇妙さは少しずつ変わりつつある。

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 ふじい・けんじ 島根県吉賀町出身。日本安全保障戦略研究所研究員。最近の論考に「対日講和条約と竹島」(『島嶼(とうしょ)研究ジャーナル』8巻2号)がある。

2020年1月19日 無断転載禁止