核のごみ

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の候補地選びに関する自治体向け説明会が鳥取市であった。国の担当者がインフラ整備など受け入れ地域への支援策を強調するのを聞き、アメを見せて迷惑施設の立地を促す構図が頭をよぎった▼「社会全体の課題」という説明だったが、アメに心が揺れそうな地域は都会地ではなく、財政基盤の弱い地方に限られるだろう。「受け入れ地域への敬意や感謝の念、社会利益還元の必要性を国民で共有」との言葉からは、”よそ事感”が透けて見えた▼核のごみは数万年の管理が必要。仮に受け入れ自治体が都会並みに整備されても、途方もなく厄介な代物を抱えることと釣り合うだろうか。普通のごみ処理場と比べて、格段に重い問題だ▼受け入れ自治体の住民全員に立ち退いてもらい町一つ消滅させるか、住民ごと町一つ移転するかして跡地に造るくらいの発想でないと解決しないだろう。アメで釣るかのような国の態度は、あまりに軽く感じる▼2011年の福島第1原発事故直後、役場ごと埼玉県に集団避難した福島県双葉町の住民を取材した。大きな産業がなく東京への出稼ぎが多い町で、原発のおかげで仕事ができたという。事故を経験してなお原発再建を願う住民が少なくないのに驚いた。あれからもうじき9年。住民の目には出口の見えない核のごみ問題がどう映っているだろう。(志)

2020年1月27日 無断転載禁止