IT革命への対応/日本の長所を生かそう

島根経済同友会終身特別幹事 宮脇 和秀

 1853年に黒船を率いて来航したペリー提督が「ひとたび文明世界の過去および現在の知識を習得したら、日本人は将来の機械技術分野で強力な競争相手となるだろう」と言っている。カラクリ人形に代表される職人の完璧な手工業技術、旺盛な好奇心、勤勉さ、礼儀正しさなどは提督に感銘を与えた。

 アジア諸国が欧米諸国の植民地化となる中、日本は260年の鎖国から一気に立ち上がり列強に伍す大国となったのは「ざん切り頭をたたいてみれば…」が物語っているように、変わり身の早さと言うか変化への対応力のすごさであろう。

 次なる大変化であった終戦後も、日本は経済大国として立ち直ったが、これも知的好奇心・勤勉・勤労・誠実・丁寧・団結力など、日本人のDNAがなせる業である。今やIT革命という3度目の大変化が来襲しているが、過去2回ほど上手く対応できていない。

 理由はいくつかある。「21世紀の石油」と言われるデータに対する国民の認識の希薄さ。行政に代表される縦割り組織が、データの一元化を遅らせている。伝統的に文高理低社会であったので、理系人材が少ない。安全で完璧な金融システムが構築されており、デジタル化せずとも利便性が高い。「もの作り」大国として成長してきたので効率化・経済性が重要視され、全く新たな価値を創造するイノベーションが苦手…、などなどであろう。

 しかし、何でもデジタルは危険な面も多々ある。

 先日、米国のアップルとグーグルを訪問した時に「面白いものがありますよ」と紹介されたのが、小学校の校門前のマークであった。駐車禁止マークなら大きな円に斜線が引かれ、中心に車があるが、なんと車の代わりにスマートフォンが描かれているのだ!

 世界の頭脳と言われる高給取りの技術者たちが、自費で幼稚園、小学校、中学校を設立しており、そこではスマホを子どもたちに使わせない。スマホばかり使うと、人間関係、人の機微、物の本質を掘り下げる能力が退化する可能性があり、人間社会に何が必要なのかを深く思考する人材がいなくなるからだという。

 ベンチャーは足を運ぶ、手を動かす、頭を回す、心を通わすのが基本だとも。何でもかんでもITでは広がりと豊かさを失う。人間(アナログ)を基軸にしたIT化を進めねば意味がない。

 私の父はリベラルな人であったが、陸軍中尉でもあったので厳しさがあり、家庭におけるガバナンスは確立していた。多くは語らないが家長の下、母をはじめ子どもたちの統制は効きまくっていたように思う。

 最近はガバナンスだのコンプラだのが、研修したりマニュアル化されたりしているが、昭和までの日本では当たり前の事であった。働き方改革は必要だと思う反面、単なる時短や強制労働排除ばかりが論じられるのは違和感がある。もっと日本は自由闊達で明るく団結力とガッツに富んだ国のはずだ。

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 みやわき・かずひで 1949年、大田市生まれ。慶応大卒。富士ゼロックス海外事業部・神戸支店勤務後、故郷に帰る。ミック代表取締役社長、MCセキュリティ、メディアスコープ代表取締役。

2020年2月10日 無断転載禁止