郵政の経営/具体的な将来像を示せ

 かんぽ生命保険と日本郵便の保険不正販売で、日本郵政グループは約6万人の契約者の追加調査を決めるとともに、業務改善計画を金融庁と総務省に提出した。問題の背景にあるのは、民営化路線の方向が定まらないことだ。不正の全容解明と再発防止に努めるのはもちろん、できるだけ早くグループの具体的な将来像を示す必要がある。

 調査対象の契約は約22万件に上り、顧客に不利益を与えたことが分かれば契約を解消する。調査の長期化と被害拡大は避けられず、4月からの販売再開は不透明となった。既に調査している契約約18万3千件のうち、法令違反と社内規則違反は1月29日時点で計1412件確認され、昨年12月時点の670件から2倍超に増えた。

 業務改善計画には、不正販売の再発防止策として、新規契約獲得を重視した営業手当の見直しや保険勧誘時の録音、録画を明記した。

 昨年6月に発覚した保険不正販売は、これまでに判明しただけでも、前例がないほど大規模で悪質だが、不正の実態を過小に見積もってきたつけが回った形だ。極めて深刻な事態である。

 今後は、今年1月に日本郵政社長に就任した元総務相の増田寛也氏ら新経営陣が、顧客軽視の組織体質を転換し、経営判断が甘く意思決定が遅い企業統治の在り方を根底から改革できるかどうかが焦点となる。

 まず求めたいのは、徹底的な追加調査で不正販売の実態を余すところなく明らかにし、業務改善計画に盛り込んだ再発防止策の細目を具体化して誠実に実行していくことだ。生半可な姿勢で取り組んでは、組織的な不正が再発する恐れは否定できない。経営陣の覚悟が問われる。

 さらに必要なのは、日本郵政グループのこれからの成長戦略、完全民営化に向けた道筋を早期に提示することだ。不正販売問題の要因として、2007年に始まった郵政民営化がいまだに中途半端にとどまり、将来の姿がはっきりしないことが指摘できる。

 かんぽ生命とゆうちょ銀行は、政府の信用力を利用して生命保険や投資信託を販売しているが、「民業圧迫」を避けるために厳しい規制で手足を縛られ、魅力的な新商品やサービスの開発ができない。これが高齢者を狙い撃ちにしたような強引な保険販売につながった面がある。

 日本郵政グループは政府が筆頭株主の日本郵政の傘下にかんぽ生命、ゆうちょ銀行、日本郵便の3社があり、かんぽ生命とゆうちょ銀行は、全国2万局超の郵便局網を持つ日本郵便に販売を委託し、年約1兆円の手数料を払っている。日本郵便は郵便事業の縮小が止まらず、他の2社の手数料に依存しなければやっていけない体質なのだ。その2社も超低金利の継続で利益水準が低下している。

 政府は保有する日本郵政株式の売却期限を、22年度から5年延長する方針を固めた。政府は同株の売却で東日本大震災の復興財源を確保する計画だが、不正販売の影響で株価が低迷し、売却の見通しが立たない。かんぽ生命とゆうちょ銀行の全株式を売却する計画はなおさらだ。

 グループ各社の経営の在り方を真剣に考え、将来の青写真づくりを急ぐべきだ。課題を先延ばししてはならない。

2020年2月14日 無断転載禁止