新型肺炎基本方針/社会全体で拡大防止を

 政府が新型肺炎対策の基本方針を決定した。今後、患者が大幅に増えた地域では一般の医療機関でも感染が疑われる人を受け入れる一方、重症者を優先し軽い症状の人には自宅療養を求める。感染の急拡大を止められるか否かの重要局面を迎えており、各個人や企業も含め社会全体で可能な限りの手を尽くしたい。

 政府の対策本部や専門家会議は、国内に大規模な感染拡大が起きている地域はないとする一方、「これから1~2週間が急速な拡大の瀬戸際」との見解を示し、流行を食い止めるには患者増加のスピード抑制が極めて重要と強調した。当初政府は空港などでの水際対策を重視していたが、今やどこで感染したか不明な患者も確認される段階に入っており、妥当な情勢認識だ。

 具体的な治療態勢については、各都道府県の帰国者・接触者外来だけでは対応できなくなる恐れがあるため、患者が大幅に増えた地域では一般の医療機関でも、感染が疑われる人を受け入れる。

 感染拡大防止に関しては、患者が増えた地域は外出自粛を求める対応を強める。その上で、むやみな医療機関受診は感染リスクを高めるとし、軽症ならば原則として自宅で療養してもらい、医療機関は重症化の恐れがある人の治療に注力させていく方針だ。限られた医療体制で国民の生命を守りつつ感染拡大を防止するにはやむを得ない判断だ。

 ただ自宅療養の判断が正しくできるのかという懸念はある。政府は一般の人については、風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続くときに帰国者・接触者相談センターへ電話相談してからの受診を呼び掛けている。しかし高齢、持病など重症化リスクの有無や、インフルエンザとの区別がしづらいなど素人判断が難しいことも事実だ。

 近く政府は、専門家の意見を踏まえて軽症の人が自宅療養する際の注意点、家族の看護方法などを公表するとしている。情報が不足すると必要以上に不安が高じかねない。安倍晋三首相が述べた「何よりもまず国民に正確で分かりやすい情報提供をしていく」との方針を徹底してほしい。品薄状況が深刻なマスクの増産にも政府は引き続き指導力を発揮すべきだ。

 同時に個人や企業の側にも自助努力が求められる。自宅などで勤務するテレワークやラッシュアワーを避ける時差出勤などの働き方改革をこの機に推進したい。風邪症状が出た人はすぐ休暇を取得することも労使が協力して徹底すべきだろう。

 25日の東京株式市場は新型肺炎拡大で世界景気が悪化するとの懸念が強まり、日経平均株価が急落。下げ幅は一時1000円を超えた。前日の米国株が大幅下落したほか、アジアや欧州も含め世界で株安が連鎖した。日本政府などの対策が後手に回ってきたことや、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が具体的対策を打ち出せなかったことで市場に不安が広がったと思われる。

 すでに日本では新型肺炎の感染拡大を警戒して、社会活動の自粛や人権侵害の恐れがある事例が起き、社会不安が高まりつつある。この状況が長期化し、東京五輪・パラリンピックへの影響が現実味を帯びてくれば、景気後退の懸念が一層強まる。ここが正念場と考えたい。

2020年2月26日 無断転載禁止