河井夫妻秘書ら逮捕/前法相関与徹底解明を

 自民党・河井案里参院議員が初当選した昨年7月の参院選で車上運動員に法定上限を超える報酬を支払ったとして、広島地検は公選法違反(買収)容疑で案里氏の公設秘書や、夫で疑惑が発覚した昨年10月末に法相を辞任した河井克行衆院議員の政策秘書らを逮捕した。併せて東京・永田町の議員会館にある夫妻の事務所を家宅捜索した。

 今後、秘書らの有罪が確定し、公選法で規定する連座制の対象と判断されれば、案里氏は関わっていなくても当選無効となり、失職する可能性がある。公選法などは原則無報酬の選挙運動で例外的に車上運動員への報酬支払いを認め、日当の上限を1万5千円と定めているが、14人に倍の3万円を渡した疑いがある。

 逮捕された公設秘書は、もともと克行氏の公設秘書だった。参院選で案里氏陣営に加わり、車上運動員の取りまとめを担当。当選後に案里氏の秘書となった。そうした中で陣営の選挙運動は克行氏が取り仕切り、運動員らに細かく指示していたとされ、自ら旧知の会社員に支持固めを依頼して約86万円を振り込んだ疑惑も浮上している。

 克行氏の関与を徹底解明する必要がある。一方で夫妻は疑惑発覚後2カ月以上も行方をくらまし、1月15日になり報道陣の取材に応じたものの捜査中を理由に何も語らず、以後も口を閉ざしたままだ。地元有権者や国民に対し説明責任を果たすよう求めたい。

 問題の参院選では、広島選挙区で自民党が21年ぶりに現職の溝手顕正元国家公安委員長とともに案里氏を擁立。野党系無所属の現職と三つどもえの激戦となった。それを前に案里氏と夫の克行氏が支部長を務める政党支部の口座に党本部から、それぞれ7500万円が振り込まれた。合わせて、1億5千万円。落選した溝手氏側への1500万円の10倍にもなる。

 克行氏は菅義偉官房長官に近いとされ、党本部の肩入れが浮き彫りになった。党内からも「不公平」と声が上がり、野党は「買収に使われたなら、大問題」と政治資金の使途を追及したが、安倍晋三首相は「報告は受けていない」と述べた。

 潤沢な資金を手にした案里氏陣営は大量の印刷物を配布するなど「尋常じゃない金の使い方」に溝手氏陣営は驚いたという。その中で運動員の買収事件も起きた。だが、それだけではない。地検は1月15日に買収容疑で夫妻の地元事務所などを家宅捜索したが、その後、克行氏と旧知の会社員宅も捜索していた。

 この会社員の男性は地検の任意聴取で、昨年6月に克行氏から直接、選挙運動支援を頼まれて支持固めに動き、計約86万円を受け取ったとした上で「違法性のある報酬だと認識していた」としている。報酬は案里氏が支部長の政党支部から3回に分け男性の銀行口座に振り込まれたという。公選法では車上運動員のほか、手話通訳者や事務員などへの報酬を認めているが、男性はそのいずれでもない。

 広島地検は、東京と大阪の特捜部からの応援、広島県警の協力も得て捜査態勢を拡充。任意聴取は選挙に関わった学生らにも及んだ。捜査方針も最高検と打ち合わせたという。政権や国会はいつまで手をこまねいているのか。夫妻に違反の実態をただすなど積極的に動きだすべきだ。

2020年3月4日 無断転載禁止