休校要請から1週間/拡大防止策を立て直せ

 安倍晋三首相が新型肺炎拡大防止に向け小中高校の一斉休校を要請してから1週間が過ぎた。調整、準備不足で現場は混乱した。トップダウンの即断即決にこだわり、国民の不安を増幅させなかったか。検証が必要だ。

 首相は、私権制限を伴う緊急事態宣言を可能にする特別措置法改正も表明した。優先すべきは強硬手段が必要になる前に拡大を止めることだ。そのためには科学的分析に基づく、急所を突くような効果的、効率的な拡大防止策を早急に絞り込み、態勢を立て直すべきだ。

 誰もが自宅にこもり外部との接触を絶てば有効に違いない。だが、それでは社会、経済活動がストップして物やサービスの供給が止まり、非正規で働く立場が弱い労働者から雇い止めが始まり、家計が行き詰まる世帯も出てくる。

 世の中は基本的な歯車が常に回っている必要がある。有効性や優先順位を勘案し、止めるべきは止め、動かすべきは動かすという、兼ね合いのつけどころを判断し実行することこそ政治の仕事だ。

 首相の休校要請はどうだったか。小中高、特別支援学校は約1カ月休校するよう求める一方、幼稚園、保育所、放課後児童クラブ(学童保育)は共働き世帯に影響が大きいとして除外した。

 親が仕事を休めない小学生を預かるため、学校の空き教室も使って学童保育を朝から開き、学校の教員も手伝いに加わるよう態勢を整えた。狭い室内で多くの子どもが過ごす点では学校と同様だ。だが首相は国会審議でも、学校を休校にすることと、このような学童保育補充との防疫上の整合性を説明できなかった。

 子どもの預け先がない社員のため子連れ出社を認める企業も出てきた。時差出勤、テレワークを推奨しながら、子どもが通勤電車に乗るリスクにさらすことにもなる。「子どもの健康、安全第一」の目的を再確認してほしい。

 一方、政府の専門家会議は、軽症の若者らが広範囲で動き感染拡大させた可能性が高いとのデータ分析結果を公表。その上で10~30代はライブハウス、カラオケボックス、スポーツジムなどに行かないよう呼び掛けた。

 行動範囲が広い中高生らの日常生活の方がむしろリスクが大きいと思われる。今後は校外での生活上の注意を徹底することが有効ではないか。

 子どもの世話で会社を休まざるを得なくなった人は、正社員、非正規を問わず日額最大8330円補償されることになった。だが自営業者、フリーランスは対象外だ。一斉休校で仕事が困難になった点では自営業も同じ、政府は早急に再検討すべきだ。

 休校やイベント自粛の要請に法的根拠を後付けするような特措法改正にも疑問は多い。首相は「形」を整えることにこだわるが、「瀬戸際の1~2週間」が過ぎるころに2月1日にさかのぼって法整備する意味は説明されていない。一日も早く危機を脱して社会不安を解消するには具体策こそが重要だ。それは現行法でも可能ではないのか。

 首相の「桜を見る会」私物化疑惑、東京高検検事長の定年延長問題、そして自民党の河井案里参院議員陣営の車上運動員買収事件などから野党や世論の耳目をそらす「煙幕」に使われないか、注視していく必要がある。

2020年3月6日 無断転載禁止