大震災9年・今後の復興庁/防災部門と統合目指せ

 東日本大震災から9年を迎える。「復興の司令塔」である復興庁は、2021年3月末の設置の期限が10年間延長されることになった。岩手、宮城両復興局は盛岡、仙台両市から沿岸部に移し、福島復興局は福島市に引き続き置く予定だ。今国会で関係する法律が改正される。

 岩手、宮城両県では海岸の堤防や道路、鉄道、港湾の復旧、災害公営住宅の建設などハード面の事業はほぼ終わった。残る課題は被災者の「心のケア」や、地域のにぎわいの再生、コミュニティーの維持など。業務量が減ることから、両県の復興局の規模縮小もやむを得ないと言える。

 復旧の終了に伴い組織の在り方を議論する25年度には、両県の復興局を廃止するという案も浮上するだろう。それに備え、にぎわい再生や地域づくりなどソフト面の事業に自治体が自由に使える新たな基金の創設を検討すべきだ。

 新潟県では中越地震からの復興を支援する人材育成などに充てる基金をつくった。こうした例を参考に、国と自治体で新たな財源を用意し、課題を解決するため、多様な人材が長期にわたって活動できる基盤をつくっておきたい。

 一方、東京電力福島第1原発事故からの復興が遅れている福島県の沿岸部については、国が責任を果たすのは当然だ。原発周辺地域に被災した住民や事業者の帰還を促すだけでは足りない。新しい産業を育て雇用の場を創出する福島イノベーション・コースト構想の具体化など、地元と約束した政策の実現に引き続き努力してほしい。

 設置から8年が経過した復興庁は、復興の窓口として自治体にワンストップで対応してきた。これにより「国のどの省庁、どの課に行けば復旧、復興の支援が受けられるか」などと自治体が迷うことがなくなった。

 さらに、窓口で相談を受けた事案のうち、関係省庁で対応できなければ、復興庁が横断的に施策を立案・実施したこともある。自治体の要望が門前払いされたり、たらい回しされた末に放置されたりすることは避けられた。この仕組みは評価したい。

 東日本大震災以降も大きな地震や、毎年のように深刻な水害が起きている。にもかかわらず、安倍政権が、設置期間の延長を契機に、内閣府防災担当部門と一元化する「復興・防災庁」の創設を決断しなかったのは残念だ。

 今後も大規模水害や地震が想定される。復旧などの取り組みは、被災者に寄り添い、自治体の負担を軽減するため、自治体が関係省庁に個別に要請して回るのではなく、国が窓口を一本化した方がスムーズに進む。それは復興庁で実証されたはずである。

 南海トラフ巨大地震のような「国難」の発生を視野に入れ、被災する可能性のある自治体は、事前の復興計画の策定などを急ぐ。街の中心を津波や水害の危険性が少ない所に移すといった長期的な視点での地域づくりを計画に盛り込むことが不可欠なだけに、多くの専門家がいる国の支援も重要となる。

 この「事前防災」から災害発生時の対応、そして復興の司令塔となる一つの組織をつくることは被害の軽減と迅速な復興につながる。復興庁の組織を次に見直す際には、復興と防災部門との統合を目指すべきだ。

2020年3月9日 無断転載禁止