別れの季節

 先週末、久々に家族と過ごし、近所を散歩した。夏はカブトムシが捕れる木々がある坂で、桜のつぼみが膨らんでいた。春は別れの季節。毎年胸がきゅんとする▼今年は新型コロナウイルスの感染拡大で例年と違う春となった。政府の休校要請で、唐突な学校生活の幕切れや級友との別れを余儀なくされた児童生徒もいる。休校になって喜んでいた我が子は時間を持て余し「早く学校に行きたい」と言うようになった。先行きが見えず、不安感が社会を覆い、人々の生活や地域経済にも影を落とす。自粛ムードが広がりイベントは次々と中止。送別会シーズンを迎えたが、繁華街の人はまばらだ▼異例の春に編集職場を離れることになった。どうやってお世話になった人に思いを伝えるか。46歳の中年でメールやラインが苦手なこともあるが、生の言葉や手書きの文字で伝えたいと思う▼携帯電話がなかった28年前、大学進学で上京する際、駅のホームで友人から掛けられた言葉は、慣れない都会暮らしの中で何度も勇気をくれた。社会人となり、転勤の際にもらった手紙や寄せ書きの色紙は今も宝物。辛(つら)いときに読み返そうと大事にしている▼これまでと違う春だからこそ、桜のつぼみのように感謝の気持ちは日々大きくなる。ウイルスは恨めしいが、今年の別れはいつかきっと忘れられない思い出になる。そう信じて、別れの後に待つ出会いに向かう。(添)

2020年3月20日 無断転載禁止