新型コロナでEU封鎖/欧州は、ここが正念場

 新型コロナウイルス感染症対策の「主戦場」が中国から欧州に移った。欧州連合(EU)は、非EU市民の入域を30日間制限することを決定、日本も欧州からの入国制限を強化する。欧州を事実上世界から隔離する思い切った措置で、感染の封じ込めを図る。

 世界保健機関(WHO)が懸念するのは、新型コロナが今後、医療態勢の整わないアフリカなどの途上国に波及していくことだ。アフリカに近い欧州における対策の成否は、その破局を防げるかどうかも占う。ここが正念場だ。

 欧州で新型コロナが急速に広がったのは、やむを得ない側面もある。国境を越えた往来の自由は、欧州統合の重要な成果であり、経済の原動力でもある。各国とも入国管理の強化をためらった。

 当初感染者が集中していたのはイタリアだが、逡巡(しゅんじゅん)する間にスペイン、フランス、ドイツなどでも感染が急激に広がった。このためEUは慌てて強硬策に踏み切ったとみられる。このほか、EU加盟各国も近隣国との国境封鎖や外出制限、飲食店の閉鎖などの対策に乗り出している。

 中でも厳しい措置を取ったのがフランスだ。警察官ら10万人を動員し、検問で人々の移動を制限、違反者には罰金も科す。統一地方選の第2回投票を延期し、感染者の多い地域に病院設営のため軍も動員する。「私たちは(ウイルスとの)戦争状態にある」(マクロン大統領)との言葉が欧州の現況を示している。

 市民の生活は一変した。多くの国で、美術館や映画館だけでなくカフェやレストランなど日常の憩いの場も閉鎖され、市民は自宅で「巣ごもり」を余儀なくされている。長期化すれば、ストレスは相当なものだろう。

 EU当局や各国政府は、対策の副作用にも気を配る必要がある。国境閉鎖が医療関係者や必要物資の移動の妨げになっては、逆効果だ。WHOは、クラスター(感染者の集団)の封じ込めなど他の対策も並行して行わなければ、渡航制限は「何の効果ももたらさない」と警告する。

 さらに、経済活動の大幅縮小が直撃する雇用や生活への援助も急務だ。EUのユーロ圏諸国は、景気の下支えのため国内総生産(GDP)の約1%(約14兆2千億円)に相当する財政措置を講じると確認したが、経済と社会の崩壊を防ぐため、あらゆる手だてを尽くさなければならない。

 フランス紙ルモンドは論説で「新型コロナウイルスは、私たちの頭脳にも伝染する」と思慮を欠く行動をいさめた。「(2015年の)難民危機のように、コロナ禍はグローバル化に対する私たちの恐怖心を映し出す鏡となるかもしれない」

 国境を越えて広がる感染症への恐怖に、どう耐えるか。米中のように、感染拡大の責任を巡って、要人らがののしり合うのは論外だろう。

 イタリアでは「巣ごもり」中の市民らが自宅のバルコニーに出て、隣人と歌曲を合唱する映像が、次々と会員制交流サイト(SNS)に投稿されている。カンツォーネの国らしい映像だが、孤立する人々が、お互いを励まし連帯することの意味は小さくない。

 不自由な生活が続く試練の中で、理不尽な敵意や不合理な行動をいかに抑えるか。この危機では、そんな知恵も試されている。

2020年3月20日 無断転載禁止