桜トンネルの名所

 暖かい日差しを浴びて、つぼみが大きく膨らんでいた。雲南市木次町木次の斐伊川堤防桜並木。順調にいけば間もなく開花し、月末か4月上旬には満開になるとみられる。桜は陽光を浴びると、ピンク色が濃くなる。今春は晴れの日が多いとされ、色鮮やかな花が期待できそうだ▼南北2キロにわたりソメイヨシノやエドヒガン約500本がそろう並木は、桜を愛する住民の心によって育まれた。1920(大正9)年ごろから町民が植え始め、昭和天皇の即位を祝い、植樹が進んだ。木次小学校の子どもたちがそれぞれ、受け持つ木を決めて世話をしてきた▼そうした思いは今も受け継がれ、雲南市は島根県内で唯一、さくら守(もり)を設けて手入れをしている。現在の遠田博さん(72)は3代目。樹齢60~90年の木々に寄り添う。根にキノコが寄生して木が枯れるナラタケモドキ病が広がらないよう、地道な作業を欠かさない▼中国地方有数の名所として、斐伊川堤防桜並木の桜トンネルが多くの人々を魅了してきた。90年に「日本さくら名所100選」に認定されてから、今月で30周年を迎えた▼新型コロナウイルス感染防止でイベントは中止されたものの、花は咲く。こうした時だからこそ、来訪者の心を和ませ、明日への希望を育んでくれるに違いない。春は別れと出会いの季節。本欄の執筆は今回が最後となる。読者の皆さんに感謝しながら筆を置く。(道)

2020年3月23日 無断転載禁止