「希望の火」は付いたままだ

 予想していたとはいえ、いざ決まると、残念さと安堵(あんど)の思いが交錯する。東京五輪が1年程度延期されることになった。開催国として、国を挙げて準備を進めてきたが、新型コロナウイルスの感染が世界中に広がる状況ではやむを得まい▼数カ月前まで、こんな事態は誰も予想していなかった。世界保健機関(WHO)が「パンデミック(世界的大流行)」を表明するほどの急速な感染拡大は、グローバル化に潜むリスクの一つ。生活習慣や衛生観念が違う人々が頻繁に往来していることを忘れてはいけない▼開幕が4カ月後に迫った段階での「苦渋の選択」は、何が一番大事かを考えた結果なのだろう。海外の競技団体などから延期を求める声が相次ぐ中で予定通りに進めれば「安全・安心を軽視している」との批判の矛先が国際オリンピック委員会(IOC)や開催国・日本に向かいかねない状況だった▼日本には、日中戦争の影響で「幻の五輪」となった1940年東京大会の苦い記憶もある。今回も発端は中国であることに地政学的な宿命を感じるが、最悪の「中止」という事態は避けられた▼今後、具体的な日程や会場確保、代表選手選びなど、さまざまな調整に加え経済への影響も懸念される。ただ「希望の火」は、まだ付いたままだ。今しなければいけないウイルスとの闘いに一日も早く打ち勝ち、晴れて「平和の祭典」の日を迎えたい。(己)

2020年3月26日 無断転載禁止