河井氏側の買収事件/出処進退を含め説明を

 自民党の河井案里参院議員が初当選した昨年夏の参院選を巡り、広島地検は公選法違反(買収)の罪で案里氏の公設秘書と、夫である河井克行前法相の政策秘書を起訴した。うち公設秘書について、公選法が規定する連座制の適用対象となる組織的選挙運動管理者に当たるとみて、速やかに審理する「百日裁判」を広島地裁に申し立てた。

 連座制は選挙運動の計画を立案や調整する選挙運動管理者のように一定の立場にある陣営幹部が買収などに関わり、有罪が確定した場合、候補者本人は関与していなくても当選無効となり、同一選挙区からの立候補も5年間禁止される仕組みだ。案里氏は失職する可能性がある。

 さらに捜査は車上運動員に法定上限を超える報酬を払ったとされる公設秘書らにとどまらず、克行氏にも及んでいる。案里氏陣営の選挙運動を事実上取り仕切り、自ら支援を依頼した旧知の男性会社員に現金10万円を渡したほか、3回にわたり計約86万円を振り込んだなどの疑惑が深まり、地検は立件の可否を慎重に検討しているもようだ。

 秘書らの逮捕後、夫妻は複数回にわたって任意聴取を受けた。しかし、形ばかりのおわびコメントを出しただけで、一切口を閉ざしている。出処進退を含め、説明責任を果たすべきだ。

 公選法などは本来は無報酬の選挙運動で、選挙カーから支持を呼び掛ける車上運動員には手話通訳者や事務員などとともに例外的に報酬支払いを認め、日当の上限を1万5千円と定めている。だが夫妻の選挙では倍の3万円の支払いが常態化していたとみられ、案里氏が広島県議として4回目の当選を果たした2015年4月の県議選について、案里氏側の運動員経験者は地検に違法報酬を裏付ける説明をした。

 また衆院7期目の克行氏が当選した17年10月の前回選挙でも、同様に違法報酬支払いがあったと案里氏陣営の複数の関係者が地検に明かした。

 案里氏は09年に知事選に出馬したものの、落選。県議を4期務め、昨年7月の参院選広島選挙区で2議席独占を狙った自民党に擁立された。元国家公安委員長の自民現職、野党系無所属現職と三つどもえの激戦となり、自民現職が落選した。

 激戦の中、克行氏は案里氏陣営の無料通信アプリLINE(ライン)のグループで陣営幹部らに次々と指示し、選挙運動を取り仕切ったとされる。さらに昨年6月には男性会社員を呼び出し、支援を依頼。直後に現金10万円を手渡し、ラインで票固めなどの報告を受けた。8月初めにかけ男性の口座に案里氏が支部長の政党支部から計約86万円が入金されたという。

 男性は「違法性のある報酬と認識していた」と地検に話している。国会会期中に地検が異例ともいえる議員の任意聴取を重ねた狙いは、夫妻が車上運動員の報酬決定に関与したかどうかとともに、克行氏による買収疑惑の立件に向けて詰めの捜査を行うためだったとみていいだろう。

 克行氏は安倍晋三首相に近く、参院選で党執行部は案里氏側に、自民現職と10倍の差がある1億5千万円を入金、首相の秘書も広島入りするなど肩入れ。選挙後、克行氏は法相に就任した。首相の任命責任も改めて問われよう。

2020年3月28日 無断転載禁止