緊急経済対策/優先順位を明確にせよ

 安倍晋三首相は、過去最大となる総額102兆6580億円に上る2020年度予算の成立を受けて、緊急経済対策の策定を急ぐ。新型コロナウイルスの感染拡大で景気が急激に悪化しているのに対応する狙いがあり、4月中に対策を裏付ける20年度第1次補正予算案を編成する。

 政府、与党では内容として現金給付をはじめ企業への金融支援、消費や観光の促進策が検討されている。事業費の総額は名目国内総生産(GDP)の1割に当たる56兆円を上回る規模を目指しているという。

 政府としては大規模な対策を早急にまとめることで、感染拡大への国民の不安を和らげ、景気悪化を最少に抑えたい思惑があるのだろう。

 しかし東京で罹患(りかん)者が急増するなど感染制圧はまだ見えていない。それでいながら検討中の対策には外出自粛に反し、感染者を増やしかねないアイデアも含まれている。

 まずは感染防止を最優先とする中で、仕事や事業ができなくなり困窮する世帯と企業・事業者の救済を先行させるなど、対策としての優先順位を明確にすべきだ。

 検討作業で対策の柱に浮上しているのは、新型コロナの影響で収入が減少した世帯への現金給付で、5月中の実施を目指すという。

 政府はこれまでの2度にわたるコロナ緊急対策で、子どもの臨時休校に伴い仕事を休んだ保護者やフリーランスへの賃金助成措置をまとめており、困窮世帯への追加支援は歓迎したい。

 ただその際、所得にかかわらず給付の対象とするかどうかでは慎重な検討が求められる。どこで線引きするかは給付実行の迅速さにも影響するが、国民に納得のいく制度設計を工夫してほしい。

 また、感染がまん延し今の状態が長期化するようだと、現在浮上している1世帯20万円程度の給付では足りないだろう。学識経験者からは政府が無条件で百万円単位を貸し付ける仕組みの導入などが提言されている。今回の対策にとどまらず、政府は状況に応じた柔軟な追加策も検討してもらいたい。

 人の移動制限やイベント類の延期、外出自粛により打撃を被っている企業・中小事業者への支援も急がれる。

 これまでに打ち出した政府系金融機関による資金繰り支援に加え、赤字に陥った企業への税還付や固定資産税などの減免・納税猶予を含む税制面の負担軽減策が議論されている。

 政府、与党の税制改正は例年、翌年度の予算編成に合わせて秋以降の作業となるため、この時期の対応は異例。だが、現在のコロナ危機を考えれば当然であり、早急に手を打ってもらいたい。

 今回の対策を実行するための補正予算で、財政支出は15兆円を超える見通しとされる。安倍政権は20年度予算と同じ昨年末、台風災害からの復旧を主目的に事業規模26兆円の経済対策を策定。そのための19年度補正予算を成立させた。その際の財源は2兆円超の赤字国債で穴埋めした。

 今回の補正でも赤字国債が財源になる見通しだ。例のない危機への対応が優先されるのは当然だが、財政規律への目配りを怠っていいわけではない。安倍首相は対策と補正策定に際し、その点も国民に説明する責務がある。

2020年3月29日 無断転載禁止