島根県農業産出額/企業型拡大に活路を

 県内の農業産出額を2016年実績(629億円)比で100億円増とする目標を掲げた島根県が、20年度から本格的対策に乗り出す。従来の「コメ依存」から脱却し、水田を転作してより収益性の高い園芸作物の生産を伸ばすのが柱。だが、就農者減少に歯止めがかからない中、人手不足解消という壁が横たわる。

 ピーク時の1984年に1千億円を超えた農業産出額だが、直近の2018年は612億円まで落ち込んだ。島根農業の主力となっていたコメは、同年に国が主導する生産調整が廃止され、県が市町村ごとに示してきた生産目安も20年産米からやめるなど、大きな過渡期を迎えている。

 長く必要性が叫ばれてきたコメ依存からの脱却に向け、県が柱に据えたのが水田を活用した園芸振興だ。転作の重点野菜6品目(キャベツ、タマネギ、白ネギ、アスパラガス、ブロッコリー、ミニトマト)を指定し、産地化を推進。「生産額3千万円以上の拠点産地を5年間で30カ所以上形成」するなどで、100億円増を目指す計算だ。

 柱の一つになるのが、集落を単位に共同で生産に取り組む集落営農だが、なかなか計算通りには行きそうにない。2万5千戸を割り込む販売農家の多くを占める兼業農家は、機械化が進むコメの栽培が中心で、多くの手間を要する転作に踏み出せないケースも多い。加えて「後発」だけに既にブランド化を進める他県の主要産地との激しい競争も控える。県はUIターンの就農支援にも積極的だが、急速な増加は見込めない。

 人手確保が難しい中、鍵を握るのが、企業や法人が規模拡大やIT化を通じ生産性向上を図る企業型農業だろう。

 効率的な生産ノウハウや販路を確立している企業型農業は、周辺農家との契約栽培などを通じ生産増に向けて即戦力となり得る。収穫した作物は企業が買い取るため、安定した売り先を確保できるとともに、栽培計画も立てやすくなる。企業を起点に、周辺農業を活性化させる方向性も追求すべきではないか。

 県内の企業型農業として益田市に進出したキューサイファーム島根は、健康食品の青汁の原料となる緑黄色野菜のケールを栽培。70ヘクタールの自社直営農地のほか、周辺農家と契約栽培を通じて年間10億円を売り上げている。自社農地とケールを乾燥させる加工場を合わせて120人が働き、雇用就農を導入している。

 同社の四橋雅美業務課長は「新規就農者が独立するには時間がかかる。農業参入した企業に対し、IT化などの投資に重点的に支援することを行政に求めたい」と話す。

 県内で農業のIT化に先駆的に取り組んでいるJAしまねの子会社、JAいずもアグリ開発は、太陽光を利用した植物工場を運営。ITを活用してハウス内の温度や湿度などを自動制御。省力化に効果を上げている。

 ベテラン農家の経験や勘に頼っていた栽培管理を標準化することで、品質のばらつきが少なくなったという。

 100億円増の目標は容易ではないが、県も契約栽培などで周辺農家に波及効果を与える企業型農業を支援し、20年度から5年計画で5社以上の誘致を目指す。就農人口の減少を食い止めるためにも、企業型農業を中核的な担い手として位置付ける道もある。

2020年3月31日 無断転載禁止