高倉健さん似の親米派

 60年前の今頃、国会周辺は騒然としていた。日米安保条約改定の承認案を自民党が強行採決したのに抗議して、連日デモ隊が国会に押し寄せ、6月には突入。排除しようとする警官隊と激しく衝突し、多数の負傷者を出した。デモに加わっていた東大生の樺美智子さんが亡くなり、安保闘争がピークに達していた▼今年還暦を迎えた改定日米安保。わざわざ改定と付け加えるとぎこちないが、改定前の旧安保と比べて、米軍が日本を守る義務を明記するなど安全保障の質を高める意義が込められている▼安保を基盤とした日米同盟の強化を一貫して訴えていた元外交官で外交評論家の岡本行夫さんが亡くなったのは1カ月前。74歳だった。死因は新型コロナウイルスによる肺炎▼同じ死因でもタレントの志村けんさんや岡江久美子さんのような扱いにはならなかったが、首相補佐官として米軍普天間飛行場返還や自衛隊のイラク派遣問題などで泥くさい役回りを演じた。高倉健さんに似た風貌で、どこかドスの利いた話しぶりが印象的だった▼現行安保で有事に米軍が日本を守ってくれるという核心部分は、日本の片思いにすぎないと懐疑的な見方もある。今の大統領なら「そんな心配より、在日米軍駐留経費の日本側負担をもっと増やせ」と言ってくるかもしれない。算盤(そろばん)ずくを強める日米同盟に「ミスター親米派」が天国で苦虫をつぶしているだろう。(前)

2020年5月24日 無断転載禁止