コロナと生きる・政治と民主主義/社会基盤支える法整備を

 新型コロナウイルス特別措置法に基づいて49日間発令された緊急事態宣言は、十分な補償措置のないまま権利を制約された多くの国民に経済面を中心に深刻な影響を及ぼした。特に直撃を受けたのは非正規雇用など社会的な立場の弱い人々だ。

 人との接触の削減は、健全な民主主義に不可欠な議論の機会を減らすことにもなった。他者を監視する「自粛警察」のような動きは、多様な価値観から成り立つ民主社会の基盤の危うさを浮き彫りにしたとも言える。

 新型コロナとの付き合いは長期にわたると覚悟しなければならない。宣言下での措置を検証し、年内にも予想される第2波に備えた法整備の見直しを急ぐとともに、感染症に耐えうる社会基盤の再構築に取り組みたい。

 まず急ぐべきなのは新型コロナ特措法の見直しだ。緊急事態宣言は強制力を伴わない自粛の「要請」という形で、不要不急の外出や施設の使用、店舗の営業を規制した。憲法が保障する移動や集会、営業の自由を制約するものだ。しかし、あくまでも「要請」であり、国は補償の責務を負わず、国民は自己責任での対応を余儀なくされた。

 特措法を巡っては、休業要請に従わないパチンコ店に罰則規定を設けるなどの規制強化も検討される。だが、まず見直すべきなのは自粛要請の実効性を上げるための補償措置の明確化だ。

 個人の権利を「公共の福祉」のために制約することは憲法も認めている。権利の尊重という原則の上で、公共の福祉の観点からどこまでの規制が許されるのか。その議論こそ国会で必要だった。緊急事態宣言下で国会は役割を果たせたのかも検証すべきだ。

 国と自治体の役割分担も整理する必要があろう。宣言の下で実際の措置は知事が担ったが、休業要請の対象などを巡って国と自治体の意思疎通の欠如を露呈した。

 国の対応の遅さから自治体が独自の「緊急事態宣言」を発令し、全国知事会では権限の強化と財源の手当てを求める声が上がった。現場を抱える自治体への権限委譲をさらに進めるべきだ。

 非正規やフリーランスで働く人たちの基盤のもろさもあらわになった。外出自粛中も外で働かざるを得ない人たちも多かった。芸術に携わる人も含め社会は多様な人々によって成り立っている。弱者を落ちこぼれさせないセーフティーネット(安全網)の構築を急がなければならない。

 中期的な視野で取り組むべき課題も浮き彫りになった。大都市部への人口集中は感染拡大を加速させた。一極集中の解消や地方分権の検討を本格的に進める必要があろう。

 効率性を追求してきた政治の在り方も問われる。公共機関の合理化などによって社会全体の危機対応能力が脆弱(ぜいじゃく)になっている実態が突きつけられた。政治の役割は、安心のための社会基盤構築であることを再確認したい。

 人との接触を減らす自粛の中で、「オンライン交流」などの新しい生活スタイルも生まれた。離れていても対話はできるということだ。

 ツイッター上で膨れ上がった抗議の声が、検察庁法の改正案を先送りさせる一因となった。新しい民主主義の形となるのか。その可能性も探りたい。

2020年5月27日 無断転載禁止