新型コロナウイルスの影響で棚田での交流イベントが中止

静かな棚田で農作業に励む高木健次さん=雲南市大東町山王寺
 新型コロナウイルスの影響で外出を控える動きが各地で広がり、島根県内にある「日本の棚田百選」選定地に影響が出ている。毎年、春に開催する交流イベントが中止となり、第2波の恐れから今後も予定が立たない。地区外との往来が途絶え、都市部との関係人口増加に活路を見いだしてきた戦略が岐路に立たされている。

 「いろんな人との交流が原動力だったが…」

 雲南市大東町山王寺にある「山王寺の棚田」で環境保全やイベント開催に取り組む住民団体・山王寺本郷棚田実行委員会の高木健次さん(68)は、一面に広がる棚田を眺めながら、ため息をついた。

 標高300メートルの山腹に約200枚の水田が広がる。日本の原風景ともいえる絶景は1999年、農林水産省の提唱する「棚田百選」に認定された。

 実行委は2006年から「田んぼの学校」と題し、県内外の家族連れなどを招いた田植え、稲刈り、収穫祭の年3回の交流イベントを欠かさず企画してきた。多い時で70人もの参加者を集める人気行事で地域の結束を強める効果もあったが、今春は初めて中止。高木さんは「元気なうちは頑張るが、(交流が)止まることで人手不足や耕作放棄地が増加する恐れがある」と嘆く。

 棚田百選は、営農の取り組みが健全▽棚田の維持管理が適切▽オーナー制度や特別栽培米の導入-など、地域活性化に取り組んでいることが認定基準で、県内は7地区が選ばれている。島根県の調査によると、総面積は認定時の72ヘクタールから、18年は16.7%減の60ヘクタールにまで縮小した。

 同県吉賀町柿木村の「大井谷棚田」の保全活動を支援する吉賀町産業課の加藤彰主幹(44)は「高齢化で、ただでさえ難しい棚田保全が今度どうなるか」と、やはり地域の活気がなくなるのを懸念する。

 大井谷棚田の振興に取り組む住民団体・助はんどうの会は、町内外から管理者を募る「オーナー制度」に取り組む。今年も県内外15組の参加者の応募があったが、このうち8組が県外だったことから、初めて中止を決めた。同会副会長の村上一郎さん(61)は「応募者もがっくりしていた」と言葉少なだ。

 地域外との交流が棚田の原風景を保全する要となる中で、県農村整備課の福間昌巳調整監は「棚田が荒廃の危機に直面している」と地域と危機感を共有する。ただ、抜本的な解決策は見いだせておらず「収束後、棚田の魅力発信に努める」と述べるにとどめた。

2020年5月31日 無断転載禁止