コロナで営業不振に 業者、宿泊税の撤回訴え

新型コロナウイルスの影響で、閑散とした玉造温泉街=松江市玉湯町玉造
 新型コロナウイルスの影響で各地の宿泊業者が経営不振に陥る中、松江市に対して「宿泊税」の導入方針を取り下げるよう求める声が強まっている。「議論が不十分」との意見が根強かったことに加え、経営状態が回復するまでに数年を要するとの見方もあり、「一度白紙にしてほしい」との訴えは切実だ。

 「生きた心地がしない。今は将来のことを相談できる状態ではない」。加盟する大半のホテル、旅館が長期の臨時休業を余儀なくされた松江旅館ホテル組合の植田祐市組合長が苦境にあえぐ現状を口にした。

 ホテルや旅館の利用客から徴収する宿泊税は松浦正敬市長が2018年に導入方針を表明。市は集客事業の充実などを目的に、収入を市観光協会の運営費に充てる考えを示した。

 植田組合長はその後に設けられた市の有識者会合の委員を務め、全8回の会議に出席。「新たな財源を求めるよりも、まずは配分を見直すことが先決だ」と異議を唱えてきた。市観光協会の18年度の総事業費は約3億2千万円で、集客に欠かせない宣伝事業費はこのうちの約2割(7200万円)にとどまるからだ。

 そうした中、感染拡大の影響で組合に加盟する業者のほとんどが4、5月の収入がゼロに。自身が経営するホテルは長期滞在者らのために営業を続けたが、それでも例年に比べて8割以上の減収となった。緊急事態宣言が解除されたものの、当面は旅行需要の減退が続くとの見方が強い。

 同様に有識者会合のメンバーだった玉造温泉旅館協同組合の皆美佳邦前理事長も、オンライン会議や「3密」を避ける行動様式の普及で旅行に及び腰となる状況が続くと分析。業界全体が元の状態に戻るには少なくとも2~3年は必要とみており「一度すべて白紙に戻してほしい」と求める。

 3月下旬に有識者会合から宿泊税に関する報告書を受け取った松浦正敬市長は「早急にやっていかないといけない」と述べ、制度設計などの検討を急ぐ考えを強調した。しかし、新型コロナウイルスの影響で環境は一変し、市観光振興部の高木博部長は「今は業者に対する経営支援が最優先。しばらく検討は再開できない」とする。

 ただ、市は導入方針の撤回や先送りといった方向性は示しておらず、皆美前理事長は「観光分野全体が活気づいている状態だからこそできた議論。今はとても無理だ」と指摘。非常時に拙速に議論を進めれば、観光業界に悪影響を与えるのは必至で、実態を見据えた決断が求められている。

2020年6月3日 無断転載禁止