コロナ禍で「スサノオ」試練 航空機産業、需要に陰り

新設した航空機部品の新工場で機械を動かす秦精工の社員=安来市黒井田町
 新型コロナウイルスの感染拡大で、航空機部品の共同受注体「SUSANOO(スサノオ)」が試練に直面している。航空会社の経営悪化で機材の更新需要が著しく減退し、部品供給メーカーは受注が見通せなくなった。スサノオは島根県が国からの交付金を受けて取り組む先端金属素材の拠点化事業の中核を担っており、計画全体に影響を及ぼしかねない状況だ。

 秦精工(安来市黒井田町)の秦友宏社長は真新しい工場で稼働する機械設備を眺め、つぶやいた。「本来なら航空機部品専用の工場にしたかったのだが」

 自動車産業で使われる金型用押し出しピンの製造や特殊鋼加工が主業の同社は新たな成長分野と位置付け、約12億円かけて航空機部品を大量生産できる新工場を建設。3月の完成とほぼ時を同じくして新型コロナが直撃した。

 自動車関連の生産も縮小し、5月の売り上げは前年同月と比べ2割減った。新工場は航空部品以外の仕事で辛うじて動かし「今は受注の確保で精いっぱい」の状況だ。

 同社を含め安来、松江両市の特殊鋼関連7社で構成するスサノオにとって、2020年は「飛躍の年」となるはずだった。海外への売り込みを本格化させるため、2月にシンガポールであったアジア最大の航空機展示会に初出展。これを機に一部で商談も進んでいたが、コロナのまん延により中断となった。

 その後は7月に視察予定だった、イギリスでの世界最大規模の見本市をはじめ、国内の商談会も中止が相次ぐ。感染防止というより、航空機需要の蒸発が直接の原因だ。

 旅客機メーカーの量産停止や開発体制の縮小が吹き荒れる中、構成企業の馬潟工業(松江市八幡町)は、17年の工場新設を機に取引が始まった航空エンジン大手からの受注が4月にぱたりと止まった。勤務のシフトで休ませる社員を予定より増やす日も段々と多くなっている。松尾和夫社長は「軌道に乗ってきたところだったのに。回復に3、4年はかかるかもしれない」とうなだれる。

 こうした状況からスサノオは月1回の会合も開催を見合わせており、山根不二夫事務局長は「年内の活動は何もできないのではないか」と諦めた様子で語る。

 受注不振と活動停滞は、航空機エンジンやモーター部品素材の世界的な拠点を目指し、県や島根大などと取り組む連携事業にも影を落とす。

 22年度までの5年間で予算総額60億円の一大事業は出足の18年度で重要業績評価指標(KPI)4項目のうち、関連企業の売上増加額と雇用者増加数の2項目が未達成となり、ただでさえ巻き返しが必要な情勢。国の交付金は事業計画の進捗(しんちょく)によって毎年度の予算額が変動するとされ、着実な成果が求められる。

 県によると、コロナの影響に伴う事業計画の見直しなどに対する国の方針は現段階で示されていない。秦精工の秦社長は「コロナで停滞している分、評価時期を先送りするなどしてほしい」と訴えている。

2020年6月23日 無断転載禁止