夢は自粛させられない ボクシングジムの覚悟

体に負荷の掛かるマスク着用トレーニングで、会員にハッパをかける高倉敬典さん(左)=松江市東出雲町揖屋、拳闘塾
 「左、右、ワンツー。ほら、まだ弱い弱い!」

 松江市東出雲町揖屋のボクシングジム「夢実現工房・拳闘塾」。元プロボクサーの高倉敬典さん(53)が、ミットめがけて拳を打ち込む会員に大声でハッパをかけた。

 互いにマスクを着用してのトレーニング。1ラウンド3分間が終わると、ともに顔を真っ赤に染めて息を切らした。

 競技の特性上、選手の濃厚接触が避けられない格闘技。中でもボクシングは、新型コロナウイルスの流行が始まると同時に、全国で休業に追い込まれるジムが相次いだ。

 拳闘塾は顔見知りの会員約20人が利用する比較的小規模のジムだが、松江市内で感染者が確認されたことを受け、悩んだ末に4月中旬から1カ月間、臨時休館にした。

 「本当にこれで大丈夫なのか、常に手探りの状態で続けている」

 再開後は、健康確認や窓を開けての換気、グローブやダンベルといった器具を定期的に消毒するといった感染対策を心掛けている。ただ、高倉さんの不在時、会員が自由に器具を利用できるようにしているため、全てを消毒するには手が足りない。

 臨時休館の反動から、会員たちはコロナ禍以前よりやる気に満ちている。高いモチベーションに応えようと、高倉さんの指導にも熱が入る。

 筋力トレーニングやミット打ちはマスクを着用するよう促す。効用は感染予防だけではない。着用すると低酸素状態になり、さらに汗や呼気でマスクが湿ることで無酸素に近い状態まで体に負荷がかかる。

 「きつい思いやつらい思いをすることで、自分自身を進化させてくれる」

 厳しい環境下でのトレーニングを繰り返すことで、競技に必要なスタミナや精神力が養われる。

 「自粛、自粛で会員のボクシングへの熱意を止めることはできない。ジムとしてできる限りの対策を、責任を持ってやっていくしかない」

 感染を100%予防できる対策はない。ジム、会員のそれぞれが自己防衛をした上で、日々の練習に汗を流す。

 「目標の達成や夢の実現に向け、覚悟を持って継続したい」

2020年6月26日 無断転載禁止