ネット配信でより身近に 落語家桂吉弥さんインタビュー

 新型コロナウイルスは演芸界にも影響を及ぼした。島根県とゆかりの深い人気上方落語家、桂吉弥さん(49)も例外ではない。次々と落語を披露する場が中止や延期になる中、インターネットを活用した発信に力を入れた。吉弥さんは「生で見ていただくのが一番」としながらも、オンラインで配信することによって、会場を訪れることが難しい地方在住者などにも「より身近に見てもらえるようになればいい」と可能性を感じている。

 吉弥さんは、同じ大学落語研究会の出身者が出雲市内にいる縁から、同市内で落語会を2009年以降毎年開いている。

 東京や大阪では、新型コロナの影響で3月ごろから落語会が徐々に中止になり始めた。出雲市内での落語会を3月29日に予定していたが、延期となった。吉弥さんは「お客さんに(感染が)『怖いな、心配だな』という気持ちがあるとなかなか笑ったり、楽しんだりしてもらいにくい」と話す。

 3~5月には落語の仕事が約100件キャンセルになったという。吉弥さんは「ほぼ3カ月高座がなかった。こんなことは初めて」という状況の中、投稿動画サイトのユーチューブに自身のチャンネルを開設したり、ビデオ通話アプリ「Zoom」を用いて落語会を開いたりと、インターネットを活用した発信を模索し、取り組んできた。

 「もちろん空気感が伝わる生で見てもらうのが一番」としながらも、新たな発見があったとする。これまでは会場に足を運んでもらうのが大前提だったが、配信には地方、海外在住者や、子育てなどの都合で会場に来られない人からも反響があった。

 「そうした人たちに届けるにはとても良いシステム。これからも続けていきたい」と手応えを語り「『芸術です、大層な作品ですからかしこまって聴いてください』というものではなく、身近な芸である落語をもっと簡単に見てもらえるように勉強中です」とよりよい方法を探る。

 6月に入り、落語会も検温や客席の間隔を取った上で徐々に再開の動きが出てきた。お客さんの前での久々の高座に「コロナ前と変わらない姿勢で楽しんでくださった」と感謝する。

 7月14日には大社文化プレイスうらら館(出雲市大社町杵築南)で3月の代替公演を行う。島根について「芸人を応援し、育ててやろうという空気がある。客席からのまなざしが温かい」と話す吉弥さんは「この状況の中で来場してくださるのは本当にありがたいこと。応えられるように当日は頑張りたい」と意気込みを強くしている。

2020年7月6日 無断転載禁止