声を上げること

 ニューヨーク公共図書館は「国立」でも「市立」でもない。19世紀半ば、欧州に引けを取らない文化都市を築くのに図書館は不可欠という篤志家の寄付金で生まれた。今も運営はNPOだ▼ここの仕事ぶりは、図書館が「貸本屋」ではないことを教えてくれる。就職や企業支援、医療情報の提供、情報を使いこなすための講座開催…。何かを知りたい市民の欲求に幅広く応えている▼などと書けるのは、この図書館を取り上げた映画を鳥取市で見たおかげだ。上映時間3時間以上の地味なドキュメンタリーは、残念だが地方映画館では上映しにくい。業を煮やした鳥取県内の本好きたちが掛け合った先は県立図書館。ここもニューヨークと同様、本の貸し出し以外の仕事に積極的で、上映会を企画した。チケットは程なく完売。当日はキャンセル待ちが出るほどだった▼地方でかかりにくい映画を自主上映する取り組みは、松江市では島根県民会館の名画劇場として長く続く。1970年代、テレビに押され地方映画館が次々消えるのを見たファンが設立時のスタッフだった。コロナ禍で中断していたが、感染防止対策を施し、アニメ「エセルとアーネスト」できょう再開する▼経済優先で切り捨てられる歯がゆさは、知恵と力を持ち寄ることで、解決できる場合がある。まずは声を上げること。ニューヨークの図書館も、そこから始まったのではないか。(示)

2020年7月11日 無断転載禁止