益田出身の作家、橋本さん遺作 有志の力で発行

橋本升治さんの遺作「半夏生」を発行し、郷土を愛した作家の思い出を語り合う有志
 1月に86歳で亡くなった島根県益田市出身の作家橋本升治さんの遺作「半夏生(はんげしょう)」を、親交があった市内の有志10人が発行した。益田と縁の深い画聖雪舟(1420~没年不詳)の生涯を描いた歴史小説。益田に生まれ、益田を愛した作家の雪舟への思いがあふれる。

 橋本さんは東京の大手広告代理店でコピーライターして約30年間勤め、2008年にUターンし作家活動を展開。「益田の文化や歴史を広く紹介し益田の発展に貢献したい」とし、益田ゆかりの万葉歌人柿本人麻呂、戦国時代に益田を治めた益田元祥を題材にした歴史小説を自費出版した。

 雪舟の母「みね」が愛した花の名をタイトルに取った遺作は、全19章で構成。「終焉地に諸説ある画聖が、益田で亡くなったということを世に知らしめたい」と関連書籍を読み込み、生誕地の岡山県総社市などゆかりの地を訪れて執筆したという。

 みねから受けた慈愛や修行先の京都での禅僧たちとの交流、益田での作庭の様子、肖像画を描いた益田氏第15代益田兼堯(かねたか)との交流、山口などを経てついのすみかとなった益田での日々が、史実とフィクションを交えて描かれている。

 18年5月から1年余りで構想、原稿用紙420枚を脱稿して間もない昨年10月末に突然病に倒れた橋本さんの遺志を継ぎ、親交があった篠原亨さん(73)=益田市白岩町=らが「半夏生を出版する会」をつくり、半年がかりで発行。知人らから一口1万円の協賛金を募り、約70人から賛同を得た。

 篠原さんは「雪舟生誕600年の節目に、故人の思いをかなえることができた。遺作を通して雪舟顕彰の動きが高まれば幸いだ」と話している。

 四六判326ページ、1800円(税別)。島根県内の主要書店などで販売している。

2020年7月14日 無断転載禁止