コロナ禍でもできることを 津和野と東京、野菜市でつながり

津和野町東京事務所に直送された野菜を並べる瀧山朗子さん=東京都文京区
 「開いてよかった!」

 「ここじゃないと買えないから」

 梅雨らしい雨雲が東京全体を覆った8日、文京区にある島根県津和野町の東京事務所は、近所の主婦らのにぎやかな笑い声に包まれた。

 この日から「津和野やさい市」が再開。事務所の軒先に「登石さんの玉ねぎ」「三浦さんのニンニク」といった町直送の野菜約10種類が、手作りのポップとともに並ぶ。同事務所の瀧山朗子マネジャー(41)は「少しでも生産者の助けになれば」と、みずみずしい野菜を見やった。

 やさい市は1~3月の期間限定のはずだった。再開を決めたのは、都内で新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、町内の生産者が予想以上に打撃を受けたからだ。

 政府の緊急事態宣言の発令中、飲食店が営業時間の短縮やテークアウトへの切り替えを行ったことで4月、5月の取引は激減。宣言は解除されたものの、外出自粛の意識は根強く残り「つながりがある店であっても、経費削減などの関係でこれまでのように津和野の野菜を卸せなくなった」(瀧山マネジャー)。

 津和野町は県内19市町村で唯一、単独で東京事務所を構える。つないだのは同町で生まれ、文京区で長年過ごした文豪・森鴎外。2012年に両自治体が交流協定を締結して以降、イベントで特産品を販売するなどPRを続けてきた。

 コロナにより予定していた年内のイベントは、いったん全て白紙に。先が見えない中、6月に着任したばかりの内藤雅義次長は「津和野と東京とのつながりを持ち続けることが大事だ」と気を引き締める。

 7月に入って都内の感染者は高止まりし、200人を突破した日が続いた。小池百合子都知事が他県への移動自粛を呼び掛けるなど、島根との往来の本格的な再開は見通せない。

 だからこそ都内に情報発信の「拠点」を持つ意味は大きい。内藤次長と瀧山マネジャーは声をそろえる。

 「コロナ禍でも、できることをとにかくやる」

2020年7月14日 無断転載禁止