まる子ちゃんに叱られる

 <雨の音がドカドカと聞こえていた。水の音らしくない音である><雨は少しも疲れを見せずに力いっぱい降り続いた>。漫画『ちびまる子ちゃん』の作者・故さくらももこさんが小学生の時に体験した豪雨の様子を綴(つづ)ったエッセー「大洪水の思い出」の一節だ。表現の仕方が印象的で記憶に残っていた▼さくらさんが経験したのは1974年7月7日に静岡市などを襲った「七夕豪雨」。24時間雨量が500ミリを超え、大きな被害が出た。松江市内が広く浸水した「昭和47年7月豪雨」から2年後の出来事だ▼七夕の雨は年に一度しか会えない織姫と彦星が、天の川が渡れなくなって流す涙から「催涙雨(さいるいう)」と呼ばれるが、新暦では梅雨の真っ盛り。2年前の西日本豪雨も、3年前の九州北部豪雨も7月の同じ時期だった▼今年も七夕をまたいで九州を襲った豪雨。その延長で14日にかけて山陰でも、さくらさんが表現したような大雨が降り続き、島根県西部の江の川で氾濫が発生。流域の江津市や美郷町で避難指示が出た。人的被害を防ぐよう厳重警戒を続けたい▼近年、各地で記録的な雨量が頻発する。さらにこの先、地球温暖化で気温が2度上昇すると雨量が約1割増え、洪水発生の頻度は2倍になるという。リスクを減らす抜本的な対策を本気で考えないといけない。織姫と彦星を毎年のように号泣させたままでは、まる子ちゃんに叱られる。(己)

2020年7月15日 無断転載禁止